米中枢同時テロをテーマに世界の有名監督11人が参加し、11日に公開されるオムニバス映画『11’09”01/セプテンバー11』。他の多くの監督が9月11日に主人公が何をしたかを描いた中、“日本代表”の名匠・今村昌平監督(75)=写真右=は第二次大戦末期、復員した男がヘビになって救済されるという異色の寓話的映画を製作した。これまで極秘裏に進められてきた撮影現場の様子をリポートする。
今村監督が仏の製作会社から製作を依頼されたのは今年3月中旬。長男で映画監督の天願大介が脚本を書き、仮タイトル「おとなしい日本人」という作品が完成した=同下。
この話に、“今村組”の俳優たちが続々参加。主人公を田口トモロヲ(44)が演じ、妻は麻生久美子(24)、両親は倍賞美津子(55)、柄本明(53)。丹波哲郎(80)、北村和夫(75)、市原悦子(66)、ナレーションも兼ねる緒形拳(65)…と、短編では日本映画史上、前代未聞の豪華キャストが勢ぞろいした。
撮影は5月中旬の6日間、茨城県水海道市の寺などで行われた。同12日はヘビの勇吉が逃げ出し、村人たちが集まって相談するシーン。今村作品の顔・役所広司(46)が、なんと村人たちにお茶を配るおばさん役で女装して出演していた。
今村監督によれば、「戦争中の話だから、若い男性は皆出征している。考えてみると女性の役しかなかった」とか。
現場は今村組の同窓会的雰囲気で、俳優たちも皆うれしそうな表情。それぞれせりふも少なく、2度3度とリハーサルをしてすぐに本番に。
張りつめた空気が流れるなか、今村監督がNGを出す。たった1回で終わるのが惜しかったのだろう。俳優たちも今村監督に何か言ってほしいらしく、いつもとは逆にNGを喜んだ。「予算も時間も限られており、みんな手弁当で出てくれて助かった」と今村監督。
作品を貫くのは「聖戦なんかありはしない」というメッセージ。
「黒い雨」「カンゾー先生」で戦争の愚かさを描いてきただけに、戦争やテロを続ける人間よりヘビのほうがましだという、強烈な諷刺を込めた。
作品は11日、東京・新宿のテアトル・タイムズスクエアで特別メモリアル上映されるほか、TBSなどで同時公開も。
ZAKZAK 2002/09/05