「サインはV」の范文雀さんが死去
54歳、心不全

范文雀
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 バレーボールを題材にした往年のスポーツ根性ドラマ「サインはV」で知られる女優、范文雀(はん・ぶんじゃく)さんが5日午後1時38分、心不全のため亡くなっていたことが8日、分かった。54歳だった。数年前、リンパがんを患ったが克服し、最近は舞台を中心に活躍。来年4月の舞台出演を待ちわびながらの無念の死だった。

 「こんなことになるとは…」。文雀さんの訃報を受け、東京・品川区戸越の所属事務所前に集まった報道陣に、事務所の女性スタッフは唇をかみしめながら語った。

 それによると、文雀さんは先月中旬に体調を崩し都内の病院に入院。病床では来年4月に出演が決まっていた舞台の台本を読み、年明けに始まるけい古を楽しみにしていたという。だが、4日に容体が急変。5日に近親者に看取られ、眠るように息を引き取った。身内だけで8日に密葬が営まれたという。

 突然の死に役者仲間らはショックを隠しきれないが、ある関係者によると、文雀さんは3、4年前、わきの下のリンパがんを患い、手術を受けた。入院生活は半年に及んだが、文雀さんは「腕が上がらないの」などと話しながら、当時も仕事への意欲を燃やしていた。

范文雀
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 運命のいたずらなのか。文雀さんの出世作となったTBS系ドラマ「サインはV」(岡田可愛主演、昭和44年から放送)で演じた日米ハーフのヒロイン、ジュン・サンダースは、右肩骨肉腫(にくしゅ)で死んでしまう悲劇的結末を迎えていた。当時、ジュンの死には全国のファンから抗議の手紙が殺到したという。

 以後、野性味あふれる魅力を生かし、映画「野良猫ロック」でスケ番を熱演。ドラマではクールな悪女を演じるなど名バイプレーヤーとして活躍し、最近は舞台の出演に力を入れていた。また、NHKで放送された海外ドラマ「ドクター・クイン」で主人公の女医の吹き替えを10年にわたり担当し、幅広い年代のファンを得ていた。

 今年は「サインはV」のDVD発売に合わせ、同作に収録される“ジュンの現在”の撮影を6月に行ったほか、8月には映画「ピアニスト」の吹き替えをした。

 「舞台が楽しい。舞台女優として頑張りたい」と友人に話していた文雀さん。中国人の両親が「孔雀のように美しく」との願いを込めたその名前のように華麗な女優人生の幕は、無情にも途中で降りてしまった。

■范文雀(はん・ぶんじゃく)
 本名同じ。昭和23年4月15日、広島県生まれ。台湾国籍。上智大中退。43年にNET(現在のテレビ朝日)の「特別機動捜査隊」でデビューした。翌44年にTBSの青春ドラマ「サインはV」でジュン・サンダースを演じて人気を集めた。主な出演作は映画「人間の証明」、「マリアの胃袋」、「Love Letter」など。48年に俳優の寺尾聰と結婚したが翌年、離婚した。

ZAKZAK 2002/11/09