クルドの実相、生々しく…珠玉のロードムービー
「わが故郷の歌」

「わが故郷の歌」
「わが故郷の歌」
 フセイン捕縛後もイラクの戦火はやまない。その“戦場”にイラン側から入り、80年代の両国戦争を背景にしたクルド人のロードムービー「わが故郷の歌」(バフマン・ゴバディ監督)が評判になっている。

 先ごろ来日した監督自身もイラン、イラク、トルコ、シリアの山岳地帯に約3000万人いるクルド人の一人。国を持たない彼らをフセインは化学兵器で虐殺したが、その生活の実相は知られていない。本作は、イラク軍戦闘機の轟音(ごうおん)が響く中、カメラを回し、クルド人の状況を生々しく伝えた。

 監督は「登場人物はみな演技の素人。脚本もメークもなく、彼ら自身からストーリーを引き出した。ジャック・ニコルソンのような表情が出てはいけない」と、ユーモアあふれる表情を自然に引き出している。

バフマン・ゴバディ監督
バフマン・ゴバディ監督
 主人公のミルザ(シャハブ・エブラヒミ)はクルドの人気歌手。イランで歌を禁じられてイラクに逃げた妻を2人の息子と探す。親子げんかや盗賊との遭遇などの“珍道中”だが、戦乱のイラクに向かうなか、雪の難民キャンプや虐殺の跡など随所にクルド人の置かれた状況が描かれる。民族音楽に漂う深い情感、日干しレンガを作る女たちの姿は美しい。

 「民族や国家を描くことより、金を払って映画を見に来る人たちを楽しませ、満足させたい」と監督。さて、フセイン後の状況をどう見るか。

 「CNNやBBCが世界に伝える姿は、ブッシュが作るハリウッド映画のようなもの。本当の姿ではない。日本人は敗戦経験があり、われわれと近い人たちだと思うし、気持ちも通じるはずだ。しかし、今はその映画に出るエキストラになっていないか…」

ZAKZAK 2004/02/28