「歯ぎしりしているわよ」と指摘されても、いびき、寝言の延長線上のこと、そう気にすることもないと放っておく人が多いようだ。しかし、予防処置をしないでおくと、歯が割れてしまう恐れもあり、治療に多大な出費を強いられることもあるというからとても放っておけない。
■何十キロもの力が
「1年くらい前の慰安旅行で同僚に歯ぎしりを指摘されたんですが、たまの話だろうと放っておいたんです」と話すのは、IT企業に勤めるAさん(52)。ところが、細君から、音が気になって眠れないと訴えられ、しぶしぶ歯科医院に足を運ぶことになったという。
診断の結果は、ストレス性の歯ぎしり。歯にかかる負担は相当なもので、そのままにしておくと歯が割れるかもしれないと説明を受けた。
「歯ぎしりやかみ締めは、歯に何十キロといった力がかかるので、歯が削れてしまったり、顎が痛むようになる可能性もあります。ただし、ストレスが原因の一時的なもので、心労が軽減されれば自然とおさまるケースが大半です」と語るのは、PCP丸の内デンタルクリニックの安田和光院長。
注意が必要なのは、歯が痛んだり、顔や首の凝りなどの症状がすでに出ているケース。
「自覚症状があるのは症状が進行している証しです。歯が痛むだけではすまないこともあります」(安田院長)
歯が割れてしまうと抜歯を免れず、また、首や顔への影響も考えると、早い段階での処置が望まれる。
「歯ぎしりやかみ締めのほとんどは、就寝時にマウスピースをつけることによって症状の悪化を予防できます」(安田院長)
■枕の位置で改善
また、改善するために普段の生活で心がけられることもあるという。
「就寝時の枕の位置がポイントです。あごが少し上を向くぐらいにしておくと、あごが開きやすくなり、歯の接触を防げます。あおむけに寝る人は、頭が枕から落ちないように、バスタオルをロール状に巻いて長い枕をつくるのもいいですし、横向きに寝る人は、背筋がまっすぐになる高さの枕を使うようにしてください」(安田院長)
さらに、かみ締めは睡眠中に限らないのも厄介なところ。仕事で追い込まれたりして、知らずしらずのうちにぐっと歯をかみ締めていることもあるという。
歯ぎしりやかみ締めは自覚症状がないだけに、歯が痛むまで放っておかれがち。そういった意味ではいびき同様、家人の注意が不可欠といえよう。