今年は、4〜5年周期で流行する「伝染性紅斑(こうはん)」の流行年。両ほおがリンゴのように赤くなる症状から「リンゴ病」とも呼ばれる。夏季に患者数がピークになる。妊婦がいる家庭では胎児に影響が出る可能性があるので注意しよう。
【20〜50%は抗体なし】
リンゴ病は「パルボウイルスB19」によって起こる感染症。主な感染経路は、会話(ツバが飛ぶ)などによる飛沫(ひまつ)感染だ。小児科の定点報告の対象なので、子供の病気のように思われているが、そうでもない。
国立感染症研究所・感染症疫学センター第三室の多屋馨子(けいこ)室長が説明する。
「一度感染すると終生免疫ができるので、子供の頃にかかった人は安心です。しかし、昨年報告された国内データからすると、成人の20〜50%はウイルスに対する抗体を保有(過去に感染)していません」
子供に流行すれば、当然、大人への感染機会も増えていくという。
【症状はさまざま】
大人の感染が分かりにくいのは、小児の症状と異なるのも理由の1つ。症状が出ない人もいる。
「通常、前駆症状として発熱や倦怠(けんたい)感、頭痛などが現れますが、軽いことが多い。この時期に他人にうつしてしまう。その後、数日遅れてほほに赤い発疹が現れ、続いて腕や脚に網目状(レース状)の発疹が現れる。発疹が出た頃はウイルスの排泄(はいせつ)は見られず、他人にうつすことはないといわれています。そして、数日間で消失します」
ところが、大人の場合はほおの発疹が分かりにくい。体の発疹、左右対称の手や手首、膝などの関節痛など、症状は人によってさまざま。関節炎症状で、歩行困難になるケースもあるという。
【流行時、妊婦は注意】
特にリンゴ病で警戒したいのは、妊婦の感染。妊娠の時期によっては、胎児に影響が出る可能性があるからだ。
「妊娠中に感染すると、胎児水腫(赤ちゃんが極度の貧血)を起こしたり、流産する恐れがある。肝造血が最も盛んな妊娠20週以前に感染するとリスクが高くなります」
感染した妊婦の30〜60%は症状がなく、胎児感染の割合は約20%、うち10%程度に流産や死産が起こるとされる。
治療は、特効薬やワクチンはないが予後はいいので、関節痛には鎮痛薬を使うなど対症療法で回復を待つ。ただし、溶血(ようけつ)性貧血や免疫不全の持病をもつ人は重症化しやすいので要注意だ。
「発疹が出たら他人にうつすことはないので、会社などを休む必要はありません。保育所や幼稚園で子供の発症があればお知らせをしてくれます。発病前1週間に他人にうつすことを知って、妊婦さんはできるだけ子供たちとの濃厚接触を避けましょう」
《リンゴ病の典型症状》
★発熱や倦怠感、頭痛などの軽い症状。この時期にウイルスが他人にうつる
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★【その後、小児は…】
ほおに赤い発疹。続いて、腕や脚に網目状の発疹
★【その後、大人は…】
ほおは真っ赤にならず、淡く赤い程度。腕や脚に網目状の発疹と関節痛。