発作的に手が出る「万引」 背景に精神疾患が潜んでいる場合も

2016.05.25

イラスト・メソポ田宮文明
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 「万引」は犯罪。病気ではない。しかし、強いストレスから発作的に手を出してしまうケースがあり、これはメンタルヘルスによる医療介入が必要になってくる。少々深刻な話だ。

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 Nさん(30)は、スーパーで万引Gメンに捕まった。盗んだものは缶詰とインスタントコーヒー。お金がないわけでも、どうしてもそれがほしかったわけでもない。盗んだ理由が自分でもわからない、とうなだれる。

 Nさんは独身。両親が呼ばれて謝罪したが、事情は会社にも伝わった。会社の指示で彼は心療内科を受診。「適応障害」の診断が下された。横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師が解説する。

 「青少年の万引が自己顕示欲の発露としての行為であることが多いのに対して、社会的立場のある成人の場合、背景に何らかの精神疾患が潜んでいるケースが多い。適応障害と診断されたということは、ストレス反応としての行動異常が疑われます」

 強いストレスからの回避、あるいは刺激的な状況に身を置くことで、生きている実感を得ようとする衝動的な行動と考えられるというのだ。

 現業部門から管理部門に異動になったNさんは、当面心療内科に通院し、抗不安薬や睡眠導入薬を使った薬物治療とカウンセリングを続けることになった。社内で彼の行為を知る者はわずかで、うわさにもなっていない。会社の恩情に彼は救われた。

 「問い詰めたり説教したりするのは逆効果。主治医のアドバイスに従って“寄り添う”という姿勢で接することが重要」と語る山本医師は、こうも警告する。

 「Nさんの場合は発作的な行為だったようですが、同じことを何度も繰り返す場合は、反社会性パーソナリティー障害という別の精神疾患の可能性があり、治療法も違ってきます」

 ストレスが蔓延(まんえん)する現代社会では、自分や家族、同僚が、いつNさんと同じ立場になっても不思議ではない。決してひとごとではないのだ。 (長田昭二)

 

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