音楽30年、あくまで通過点
デビュー30周年を迎え、10月から記念のコンサートツアーがスタートします。これまでも10年、20年と区切りの年はあったんですが、やっぱり30年というのは感慨深いものがありますね。
僕はデビューしたのが25の時で、当時は独身。その後結婚して子供ができて、彼らも今では25と22です…。
僕自身は、30年前と今とでトーンは変わっていないと思うんです。作りたい音楽というのが一貫しているので、デビューアルバムと最新アルバムを続けて聴いても雰囲気は変わらないはず。まあ、それだけ不器用だということかもしれませんね(笑)。
僕の曲は大半が姉(来生えつこ)の作詞なんです。きょうだいでこれだけ長く一緒に仕事ができたというのも珍しいんじゃないですか。
姉の影響は強く受けてますね。僕が音楽にのめり込むきっかけになったビートルズも、最初は姉がハマって教えてくれた。センスや考え方が似てるんです。だから僕の作るメロディーが映える歌詞を書いてくれるし、姉は姉でメロディーライターとしての僕を認めてくれているところもある。そうやってずっとうまくかみ合ってこられたっていうのは、やっぱりラッキーですよね。
昔から一つの理想像として持っていたのが小椋佳さん。当時の彼は銀行マン。ご本人はあまり表に出ず、楽曲勝負でやっているところに憧れました。僕もこういう性格ですから、ふふふ。表に出るよりは裏方でコツコツやるほうが性に合ってる。ところがまあ、ひょんなことからデビューしてしまいまして…。
結婚したときも、本当にこの世界でやっていけるのか、不安はありました。作曲の仕事はコンスタントに来るけれど、シンガーとしての仕事が思うようにいかない。「夢の途中」がヒットするまでは、なかなかね…。
30年の間には「ドラマで中学校教師をやらないか?」なんて話を受けたこともありましたが、やっぱり音楽以外の仕事をする気にはなれませんでしたね。
結果として、好きな音楽を職業にすることができ、これだけをやってこられたのは幸せなことだ30年というのはあくまで通過点であって、これからも可能な限り続けていきたいですね。
小津と成瀬の良さが分かってきた
50代も半ばにさしかかると、やっぱり老後の不安はありますよ。
よく年配の方が「いつ死んでもいい」なんて話をしているのを聞くと、「本音じゃないんじゃないかな」って思うんです。人間はいくつになってもこの世界から去ることに恐怖があるんじゃないかって…。
でも、こればかりは自分がその歳になってみなければわからない。今の僕には死への恐怖があるけれど、もしかしたら年老いた時に本当に達観できるのかもしれない。
ただ、今言えることは、せっかく生まれてきたんだから、一度は「老い」は経験してみたい−ということ。この歳になると、そんなことを考えたりしますね。
曲作りに行き詰まると、一時的に音楽から離れるようにしているんですが、最近は映画を見ることが多いですね。特に小津安二郎と成瀬巳喜男にハマってます。この2人の作品は若い頃にも見ているのに、その時はあまり胸に迫るものを感じなかった。その良さがわかってきたのも、やっぱり年齢的なものなのかもしれませんね。
僕は性格的にかなりのめり込むほうなので、趣味もいろいろやりました。特に35歳で始めたテニスはかなり熱中したんですけど、45歳でぷっつりやめてしまった。おかげで7−8キロ太りました。
老後への不安があるわりに、積極的な健康法は取り入れてないですね。たばことコーヒーは曲作りの上で必須の備品だし…。それでも33歳で不整脈が出たときに「ハイライト」から「セブンスター」に変えたんですよ。でも今ではセブンスターだってかなり強いほうですからね。
ただ、そうやって家で好きな映画を見たり、あるいは犬の散歩に行ったりという、何気ない日常の中で、幸福を感じることはありますね。何より夫婦円満だし(笑)。
え、円満の秘訣ですか? うーん、なんだろう。基本的に僕は家のことを何もしないので、かみさんにはいろいろと言われるんですが、僕はいっさい反抗しない、アハハハ。けんかさえしなければ円満は保たれますから、それが一番の健康法かもしれませんね。
練習は目いっぱいしますよ
10月から始まるデビュー30周年記念ツアーでは、ちょっと考えていることがあるんですよ。
これまでも新しいアルバムの発売に合わせてツアーを組むことが多かったんですが、新しいアルバムから歌う曲は多くても半分くらいでした。僕自身、他のアーティストのコンサートに行って思うんですが、「新譜よりも知っている曲を聴きたい」という欲求ってあるじゃないですか。でも今回は、あえて全部歌ってみようと…。
これは、新譜にかなりのインパクトがないとできないので、僕にとっても冒険なんです。もちろん「夢の途中」や「グッバイ・デイ」のような“はずせない曲”もあるので、今回は2時間半以上かけて30曲は歌うことになると思います。
こうしたスタンダードな曲も、以前は新鮮さを求めてアレンジを変えたりしてきたんですけれど、聴く側は原曲に思い出があるんですよね。なので最近は元のアレンジで歌うようにしています。
ステージでの大失敗の経験ですか? 細かな失敗はありますよ。イントロでテンポが合わずにやり直すなんてことはよくあります。ただ、大きな失敗となると…。ああ、歌い慣れてる曲なのに、何度トライしても同じところで歌詞が出てこなかった−ということはありましたね(笑)。
ただ、僕は典型的な日本人で、人前で恥じることへの恐怖心が非常に強いんですよ。だから可能な限り練習はします。
僕のステージは、今では珍しい「スタンディングなし」。僕自身がコンサートではゆっくり聴きたいタイプなんです。でも、水を打ったように静まり返った中で歌うわけですから、一つひとつの音が大切になってくる。そういうこともあって、練習は目いっぱいするんです。
12月のコンサートはクリスマス用のスペシャルバージョン。東京は26日なのでクリスマスは過ぎているんですが、その空間だけはクリスマスに戻してしまいます。ぜひご夫婦でいらしてください。
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