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六平直政
(11/2)

■むさか・なおまさ
 俳優。1954年、東京都生まれ。52歳。武蔵野美術大学彫刻科大学院中退。コワモテの個性派俳優として活躍中。

ロケ弁タダにビックリ

六平直政
 今でこそ、テレビ、映画といろいろ出てますけど、僕が役者で食べられるようになったのは35歳ですから。遅いですよね。それまで僕はアングラでやってましたから、食べられるはずがない。

 23歳で唐十郎さんの状況劇場に入って、34歳まで12年やってて、全然金がなかった。

 だから、それはもう、ありとあらゆるバイトやりましたね。測量とか、道路のドブさらい、居酒屋の板前に、バキュームとか、とにかくもう何でもやったね。

 それが34歳のときに、柄本明さんに声をかけていただいて、劇団東京乾電池の事務所に呼んでもらったんですよ。それからです。僕はホラ、ちょっと変わってるからっていうんで、テレビとか映画の仕事なんかもらえるようになったんですよ。

 それまでは、もうガリガリにやせててね、体重56キロ、ウエスト53ぐらい。女もののジーンズがはけたもんね。それこそ栄養失調状態ですよ。

 それがね、初めて、テレビドラマのロケいったとき、弁当が出てきて、「え? いくらですか?」って聞いたら、タダでいいっていうじゃない。ビックリしたねぇ。

 「え? くれるんですか?」って聞いたら、「どうぞ召し上がってください」っていうじゃない(笑)。「うわ〜うまいな〜」って思ってね。

 だって、それまで“状況”では、ノリ弁だってごちそうだったんだから。それが幕の内弁当に、しかもお茶まで付いてくるんだから(笑)。

 そんなんだったくせに、それから何十年もやってると、「なんだよ、こんな油もん食えねぇよ。オレはそこらのソバ屋行くよ」なんて文句いったりしてね。

 だからね、ときどき反省するんですよ。あのとき初めてもらったロケ弁の感動を忘れちゃいけないってね。

 あれから、もういろんな作品に出た。映画は100本ぐらい出てるかな。それとは別に、Vシネマにも30〜40本出てたしね。テレビだけでも、300本ぐらい出てると思う。それに舞台も加えたら、ざっと全部で500本ぐらいになるんじゃないかな。

 こんど、11月1日から10日まで、20年前に旗揚げメンバーとして加わった新宿梁山泊の舞台「風のほこり」(東京・浅草木馬亭)をやるんですよ。14年ぶりです。

 なんといっても唐十郎さんの書き下ろしの本だし、今年はもうけっこう稼いだから(笑)。お金とはちょっと関係ないところでやろうじゃないかと。

 唐さんのお母さんの実話なんですけど、座長と劇団員の2人しかいない奇々怪々な一座の物語。日本のシェークスピア、唐十郎が書いた本ですからね、そりゃあね、どのセリフもすばらしいですよ。




佐野史郎んちの羽根布団で

六平直政
 僕はね、そもそも彫刻家を目指してたんですよ。っていうか、彫刻は今もプロとして作品作ってますし、出品もしてるんです。僕の師匠はあの篠田守男ですよ。篠田先生に教わりたくて武蔵美に入ったんですから。

 ところが、途中で先生がやめちゃった。そういうところは、ホラ、オレって熱いから、先生のアトリエまで何度も押しかけていって、「先生、ヒドいじゃないですか」って。そしたら、アトリエに出入りするお許しが出て、弟子にしてもらったんです。

 それがどっから芝居になったかっていうと、当時つきあってた彼女が唐十郎のファンで、連れられて、ちょくちょく舞台を見に行っていた。

 そしたら、あるとき、「状況劇場」のキャスト募集が目に止まって、役者じゃなくても、彫刻やってたから舞台美術もできるかなってカンジで応募したんです。それから、テントの釘打ちやセット作りばっかりやらされて、2年で嫌になって逃げ出しちゃった。

 そんときに、僕をとっつかまえて連れ戻したのが同期にいた佐野史郎ですよ。佐野は今でも大親友。あいつは島根の医者の息子でお金持ちでしょ。佐野んちの布団は羽根布団だったから、いつもあいつん家に転がりこんで、そこから稽古場行ったりしてた。あいつの女性関係は全部知ってる(笑)。

 あいつは、音楽もやってたし、絵もうまくて、ちょっと芸術家肌のところがあったから、オレと話がよく合った。ちょっと、こじゃれたことをよく知っていて、たとえば、ジンを冷凍庫で冷やすとトロ〜っとしてうまくなるとか、そんなことを随分教わったね。




腹立つことが多いね

六平直政
 オレ、顔は怖いけど、気持ちはけっこう優しいのよ(笑)。でも、世の中、腹が立つことはいろいろあるよね。

 たとえば、混んでる電車にベビーカーに子供を乗っけたままわが物顔で乗ってくる“バカ親”ね。「このバ〜カ」って思う。そりゃ、ガラガラに空いてればいいよ。満員電車なんか足にぶつかったりしてさ、危ないじゃない。ベビーカーたたんで、子供だっこしろっつーの。

 これをね、前にちらっと、テレビで話をしたら、「六平さんは、子育ての苦労がわかってないんです」なんて投書が来たのよ。てめぇら、バカ言ってんじゃねぇって。少子化で、たかだか1ぴきの子供でハアハア言いやがって、オレは子供3人育てたんだって。

 3人でもオレはやってたよ。ベビーカーたたんで、両手に子供だっこして、一人はベルトにつかまらして。

 だから、オレ何度か言ったことあるのよ。「混んでんだから、たためバ〜カ」って。そうするとね、鬼みたいな顔してこっちニラむんだよ。最近の若い母親は甘えてるよね。

 そのくせ、文句だけはいう。自分の子供が悪くて、学校の先生に叩かれたっていうのに、暴力振るわれたってすぐ教育委員会に文句いいに行くでしょ。大間違いだって。

 オレはウチの子供の担任の先生によく言うんだけど、うちの子が悪いことしたら、ガンガンたたいてくださいって。そりゃ、何にもしてないのに叩いちゃいけないけど、悪いことしたら叩かれればいいじゃない。

 とにかく今、世の中が過保護になってるんだよね!