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【内田浩司 小倉競輪祭 なう&リメンバー】前検日の検車場は競輪場の“パワースポット”

 競輪祭前検日、オレは小倉競輪場のバックヤードにいた。ここに来るのは4年ぶりだ。まだ早い時間だったからか、検車場の隅っこでまるで浦島太郎のように立ちすくんでいた。時間とともに参加選手や報道陣、評論家たちの顔も増えてきた。オレには多少違和感はあったがガールズ選手たちの存在は、確かに検車場を華やかにしていた。

 当然だが若い選手たちはオレのことを知らない。オレは数少ない顔なじみを探した。

 いたいた! 柱の陰で自転車を組み立てる出場29回目の神山雄一郎を見つけた。51歳になった“神様”はオレに気づくと以前と変わらない人懐っこい笑顔で挨拶してくれた。驚いたのは若い頃から自転車の角度や寸法をほとんど変えていないことだった。普通は戦法やギア、年齢とともに自然と変化していくものだが“神様”には不変なんだろう。

 もう一人、グランプリを決めている佐藤慎太郎がいい話をしてくれた。

 「特に何も変えてませんが、自分の気迫が前を走る自力型にも伝染するのかなぁ? みんないい競走をしてくれます」

 よく分かる。若い頃、後ろの“鬼脚”や“闘将”の気迫がビンビン伝わってきて緊張した。一流のマーク屋が先行選手を育てるのは今も昔も変わらない。最後に特別競輪の前検日の検車場というのは極上の“パワースポット”。

 ここは選ばれた選手たちの体中から吹き出る良質のエネルギーで満ちあふれている場所だ。オレは何度も何度も深呼吸を繰り返しながら検車場の中をゆっくりと歩いた。(元競輪選手)

 ■内田浩司(うちだ・こうじ)1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡県65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から“鬼軍曹”として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を連載中。