【糖質制限 結局いいのか、悪いのか】“糖質制限ブーム”生みの親、江部康二医師を直撃「健康な食事とは何かを考えていくことが大切」

 「私が糖質制限の書籍を初めて刊行した2005年当時、米国糖尿学会は糖質制限食を全否定していましたが、08年から肥満の患者に期限付きで認め、13年には肥満の有無や期限も付けずに糖質制限食を治療食の1つとして容認しました。このため日本の医学界も糖質制限への態度を変えつつあります」

 こう語るのは“糖質制限ブーム”の生みの親ともいえる高雄病院(京都市右京区)理事長の江部康二医師だ。

 低糖質食品などの市場は3000億円を超えるとみられ、「糖質制限」はすでにブームの域を超えて社会に認知されている。次の段階として、どんな糖質制限が最適なのかが問われる中、江部医師は厳しい糖質制限(スーパー糖質制限=1日の糖質摂取量50グラム以下)を推奨し、自身の病院でも実践している。

 「糖質制限の有効性や安全性に関するエビデンスが蓄積されていくなか、一部の観察研究で厳しい糖質制限に対して否定的な結果があるのは承知しています。しかし、観察研究は切り口次第でいくらでも恣意的な解釈が可能です」

 「一方、糖質摂取後の『食後高血糖』『血糖変動幅増大』で生じる酸化ストレスが、動脈硬化や老化、がん、アルツハイマー病などの疾患の元凶であるのは紛れもない生理学的な事実。ゆえに、糖質を制限すればするほどこれらの病気になるリスクが低下するのは理論的に明らかです」

 江部医師はそう断言する。

 さらに厳しい糖質制限で、ブドウ糖の代わりに主なエネルギー源として使われるケトン体が近年、多くの病気予防にかかわっているのではないかと注目されている。

 14年に日本でも発売されたSGLT2阻害薬を、米国で先行して心疾患リスクの高い糖尿病患者に投与したところ、心血管疾患の発症が有意に減少し、他の研究では腎保護作用などがあることも分かってきたからだ。

 江部医師は忠告する。

 「SGLT2阻害薬は尿から余分な糖を排出して血糖値を下げる薬で、薬物による糖質制限という側面を持ち、体内のケトン体を上昇させます。つまり、少し前まで危険視されていたケトン体が危険どころか、その臓器保護作用が世界的に認められたわけです。動物性脂肪しかり、コレステロールしかりで食の常識が次々と覆っていることからも、最新の情報を入手して健康な食事とは何か-を考えていくことが大切です」

 8回にわたって糖質制限に関する推進派、慎重派の見解を紹介してきたが、「過剰な糖質摂取が健康によいはずがない」という認識は共通している。

 江部医師が指摘するとおり、日本の医学界はいつまでも体面にこだわらず、糖質制限に関する正確な情報を国民に伝えていく責任がある。 (吉澤隆弘)=おわり

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