【ベストセラー健康法】医者の9割はうつを治せない 鬱病への勘違いを吹っ飛ばせ

千村晃著、祥伝社刊、1300円+税

 日本人の大半は、どういうわけか「病気は医者にかかれば治るもの」と思い込んでいる。その強い思いは、「医者の言うことは絶対に守らねば」と自分を縛り上げ、そのストレスで身動きが取れなくなることさえある。

 中でも鬱病に代表されるメンタルの病気の患者は、「付き合い方を間違えて自殺でもされたら大変だ」とばかりに、腫れ物に触るような扱いをされることが多い。事実、昨年施行されたストレスチェック制度などは、「早期発見」と「たっぷり休養」を義務付けており、企業でその窓口となる労務管理担当者が、社員のストレスチェック対策に追われて鬱病になる-という本末転倒な状況さえ招きかねない。

 そんな折も折、「医者の9割はうつを治せない」(祥伝社刊)という、衝撃的なタイトルの本が出版された。

 著者の千村晃氏は、投薬を治療の中心に置かない鬱治療で2000人の鬱患者を快方に導いた実績を持つ精神科医。

 「鬱は薬を飲んだだけでは治らないし、薬をやめても治らない。本当の原因を探り、その根っこを取り除かなければ根治しない」

 そう訴える著者は、世間にはびこる「誤解に基づく治療現場」と「患者の置かれた環境」に警鐘を鳴らす目的で、本書を著した。

 内容は、鬱症状に悩む患者と千村氏が対話する形式で進んでいく。患者の発する何気ない疑問に対する回答は、一般的にわれわれが耳にする医師の意見とは異なるものばかり。

 「休職中は無理をせず、早寝早起きで睡眠をよく取り、毎朝お日さまに当たり、薬を飲み、適度な運動をして、規則正しい生活を心掛けてください」

 まさにメンタルの医師の常套(じょうとう)句だが、千村氏はこれを一刀両断する。

 身体の病気はそれでもいいが、心の病気に絶対安静や規則正しい生活はむしろよくない-と説く。鬱になる人はそもそもきまじめな性格であって、そんな人をさらに息苦しくさせてどうなるんだ。寝たいなら寝たいだけ寝ればいい。それで自堕落になるわけでもないし、そもそも自堕落な人は鬱になりにくい-と。

 鬱病の人に「頑張れ」という励ましは厳禁、という話もよく耳にするが、これも「よく考えるべき」と注意する。

 励ましてはいけないのは、症状が緩和していない状況の人に対してのことであって、復職が近い、あるいは復職した人には周囲から前向きな励ましが必要だという。「もっと利益を上げろ」とか「人と同じようにやれ」とプレッシャーをかけるのは危険だが、常識的な励ましや期待を込めた声かけはあっていいし、そうすべきだというのが氏の考え。確かにそのほうが職場の雰囲気もよくなるし、復職した本人も居心地はいいだろう。

 「初めて著者の講演を聞いた時は衝撃を受けました。何とかこの話を世の中の方々に知っていただきたいと…。患者さんだけでなく、その親御さんや会社の総務担当の方にも読んでほしい」と語るのは、編集を担当した祥伝社書籍編集部の堀裕城氏。

 メンタルダウンが珍しくない現代だからこそ、鬱の人との本当の付き合い方を知る必要がある。鬱に悩む人も、鬱の人との付き合いに悩む人も、これを読むと少し心が軽くなるのではないだろうか。(竹中秀二)

 ■千村式「鬱の“常識”勘違い」
 ・薬を飲まないと治らない
 ・断薬すれば治る
 ・絶対に「頑張れ」と声をかけてはいけない
 ・まず病名を知ることが大切
 ・楽しんで仕事をしている人は鬱にならない
 ・運動や重大な決断は避ける
 ・休職中は規則正しい生活を
 ・“鬱ヌケ”した人の体験談が役立つ
 -以上は全部“勘違い”