【マンガ探偵局がゆく】東芝のマスコットキャラクターだった「光速エスパー」 実写ドラマ化、松本零士版もあった

松本零士版とあさのりじ版の2つが存在する「光速エスパー」(左から)

★ミッション1 東芝のマスコットを探せ!

 「マンガ探偵局」は、依頼人の要望によりマンガに関するさまざまな調査をするプロフェッショナル。最初の依頼は-。

 「最近、東芝の経営危機が話題になっていますが、子供の頃、東芝家電のお店の前に宇宙服を着た男の子のマスコットキャラクター がいたのを覚えています。あのマスコットについて調べてください」という内容。さっそく、調査結果を報告しよう。

 マスコットキャラクターの名前は「光速エスパー」。デザインを担当したのは、当時の人気マンガ家・あさのりじ。誕生は、前回の東京オリンピックが開催された1964年だ。

 はじめは、東芝の子供向け家電のパンフレットや東芝ストアのマスコットキャラクターとして使われていたが、66年1月号から、『少年』誌上であさの自身の手で連載マンガ化され、67年8月には三ツ木清隆主演で実写版の特撮ドラマにもなってヒットした(68年1月まで放送)。

 主人公の地球少年・エスパーが、ドクター・ノーマンが発明した脳波で操縦できる人間強化服を着て宇宙や海底を自由に飛び回り、悪を倒すというSFアクションもの。テレビ版が始まると、テレビにあわせてエスパーの本名が東ヒカルになるなどの変更があった。しかし、68年3月号で『少年』が休刊したために連載は終了。

 その後、『少年』の連載作品の一部がライバル誌の『少年ブック』に移籍したのに伴って68年6月号から、新たに松本零士の手でマンガ化されることになった。

この時の担当編集者はのちに『週刊少年ジャンプ』の名編集長になる西村繁男。執筆依頼を受けた松本の「あさのさんの絵のままではつまらないので自由に描かせてほしい」という頼みを聞いた西村は、松本ともに東芝の本社まで掛け合いに行き、松本オリジナルのエスパーを作る許諾を得たという。

 あさの版のエスパーがフルフェイスのヘルメットと一体になったつなぎの強化服を着ているのに対して、松本版はジェットヘルメット・スタイル。東芝ストアでも2種類のエスパーが混在することになった。

 設定も大幅に変えられて、バシウト星の難民として地球に逃げてきた少年・エスパーが古代博士に救われて、養子として古代すすむを名乗り、博士のつくった強化服で7つの超能力を手にするというもの。古代すすむの名はのちの『宇宙戦艦ヤマト』にも登場する。この松本版は『少年ジャンプ』などに舞台を移して70年まで描き継がれた。

 東芝ストアでは70年代半ばまでマスコットとして使われていたようだ。

 現在、あさの版のマンガはパンローリングの単行本で、松本版は小学館クリエイティブの単行本で読むことができる。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。2014年、日本漫画家協会参与に。

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