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静岡吟醸の雄「磯自慢」 いち早く取り入れた静岡酵母、麹づくりにも秘密 (1/2ページ)

 日本酒の銘醸地というと、雪深い新潟や東北を思い浮かべる人が多いだろう。だが少し日本酒に詳しい人なら、温暖な静岡も一大銘醸地だと知っている。それは、昭和50年代後半に開発された静岡酵母と大いに関係がある。

 静岡の水は、富士山や南アルプスの伏流水で、軟水である。非常に良い水なのだが、軟水は酵母の栄養分が少ないため、酒がつくりにくいのが難点だ。

 そこで静岡県は、静岡の仕込み水に合う画期的な酵母をつくった。それは華やかな香りときれいでまるく感じられる酒質が特徴で、吟醸酒に最適な酵母だった。そして、この静岡酵母をいち早く取り入れて大吟醸をつくったのが「磯自慢」だったのである。

 しかし、世間はまだ級別制度が全盛で、吟醸酒など市場にない時代。とにかく売るのには苦労した。それでも寺岡洋司社長は、自ら営業に出かけたことは一度もないというから驚く。

 「当時はわずか300石の静岡で最も小さな酒蔵。とても全国行脚する時間も金もなかった」と言うが、酒の質によほどの自信があったからに違いない。

 そのうち「磯自慢」の旨さに感動して「ぜひ取引したい」と申し込んでくる酒販店が増え始め、コツコツと信頼関係を築いては販路を広げていった。だから今でも特約店は地元・焼津を除いて全国で45店だけ。徹底して問屋は通さないし、デパートにも置かない。

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