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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】元金融マンの杜氏が射止めた金賞 「日本酒づくりは神秘の世界」 (1/2ページ)

★長野県「岩波」(上)

 長野・松本の地酒「岩波」を醸す岩波酒造は、松本城からも近く、観光のついでに立ち寄ることのできる蔵だ。予約をすれば、蔵見学もできる。見学者の対応をするのは、杜氏の佐田直久さんだ。

 杜氏というと、気むずかしい職人をイメージするかもしれないが、佐田さんは気さくで話し好き。それは彼が、元金融関係の営業マンだったからかもしれない。

 佐田さんは新潟出身。20代の頃、転勤で松本にやってきた。そして、豊かな自然や、温かい友人たちに囲まれて生活するうち、「こんなところにずっと住みたいな」と思うようになった。

 じつを言うと、金融の仕事は好きではなかった。ちょうど妻との間に子供がなかなかできず、悩んでいた時期。もし子供ができた時、「お父さんの仕事は?」と聞かれて、自分は胸を張れるだろうか。もっと心から打ち込める仕事がしたい。

 そう考えた佐田さんは、意を決して地元の味噌や醤油の職人に応募したのだが、畑違いの職種からの転職は容易ではなく、面接を受けては落ちる日々が続く。そんなある日、岩波酒造の蔵人募集を知るのである。

 酒どころ新潟に生まれたものの、日本酒はそれほど好きではなかった佐田さん。しかし松本の友人たちと地酒を酌み交わすうち、どんどんおいしく感じるようになり、いつの間にか日本酒が大好きになっていた。

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