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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】「生もと」一筋、海外でも大人気 和食ばかりでなく洋食にもマッチ (1/2ページ)

★福島県「大七」(上)

 福島県二本松市で醸される大七(だいしち)は、全量生もと(きもと)づくりという全国でも類を見ない酒である。

 酒のもとになる酒母(=優良な酵母を増殖させたもろみ)は「もと」ともいい、生もと、山廃もと、速醸もとなどの種類がある。

 生もとは江戸時代以来の製法。「山卸し」という米をすりつぶす作業によって、酵母以外の雑菌を殺す乳酸菌を自然発生させる。手間と時間はかかるが、純粋で強い酵母の増殖が期待できる。

 山廃もとは、明治時代にできた製法で、重労働である「山卸し」のかわりに、あらかじめ麹と水を混ぜておくことで乳酸菌を発生させる。「山卸しを廃止した」ので、山廃というのだ。

 さらに時代が下り、戦後、乳酸菌を人工的に添加する速醸もとが生まれた。速醸もとは、軽くきれいな酒になりやすい。反対に、生もとや山廃は、比較的どっしりとした飲み応えのある酒になる。どちらが好きかは、個人の好みの問題だ。

 この生もとに魅せられたのが、大七の太田英晴社長である。太田社長は幼少の頃から秀才で、二本松の神童と呼ばれていたらしい。地元の高校を卒業した彼は、東大に現役合格。その後、他社に勤めることもなく、すぐに蔵へ戻ってきた。1985年のことだった。

 当時の大七は普通酒が主流で、わずかにつくっていた生もとはブレンド用だった。級別制度の時代だったので、実験的に一級酒として純米生もとを売り出したところ、たまたま良い評判を得た。

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