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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】生もとづくりでオンリーワンに スッキリ骨太「最強の食中酒」 (1/2ページ)

★福島県「大七」(下)

 福島県二本松市の大七(だいしち)は、江戸時代の製法である「生もとづくり」一筋。生もとは手間と時間はかかるが、熟成に耐えるしっかりとした酒質の酒ができる。生もとにこだわり、30年前、全量生もとづくりの蔵へと舵を切ったのが、太田英晴社長である。

 太田社長が携わったもうひとつの事業が、2005年に完成した新蔵の建設だ。しかしこれが一大事。なにせ生もとは、蔵に棲み着いている自然の微生物が作用するつくり方。一気に古い建物を壊して、新しい建物に移るということはできない。数年がかりで徐々に移動し、生もとを仕込むもと場は、旧蔵の壁を剥がして新蔵に持ち込んだそうだ。

 こうしてつくる生もとには、強い酵母だけが純粋に残っている。だから低温に強く、寿命が長い。つまり低温で長期醗酵ができるということだ。また、弱い酵母は死んで雑味になるが、良い生もとにはそれがない。大七の酒が骨太でありながら、きれいなのはそのためである。

 大七のもう一つのこだわりは精米だ。精米所で削った米を見せてもらうと、通常はビーズのように丸くなる米が、楕円形の米の形のまま削られている。これを扁平精米といい、米の外側の、本当に雑味になる部分だけを削っているので、精米歩合50%でも、通常の精米歩合35%に匹敵する。

 扁平精米は、コンピューター制御の全自動精米機にはかえって不向きで、手動で制御できる精米機による、職人技が発揮される精米方法だ。これで大七の酒は、さらに雑味のない味わいになるというわけである。

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