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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】金沢で老舗の銘酒支える水と志 自社酵母300種類ストック、「微生物ファースト」で泥臭く (2/2ページ)

 現在、酒づくりは三季醸造で、16人の社員が行っている。彼らを発酵研究所の3人がサポートするという体制だ。すべて優秀な理科系の社員で、熱力学、物理学、システム工学の専門家である。彼らは昔の杜氏が伝えた技や作法はそのままに、先端的な微生物管理を行っている。自社酵母のストックは300種類もあり、ビーカーサイズで試験醸造できる技術も持っている。

 こう言うとなにやら近代工場のようだが、全く違う。「微生物が酒をつくるのであって、人がつくるのではない」がモットー。だから、つくりは泥臭い。微生物の状態に合わせて泊まりこむことなど当たり前。今どきの言葉で言えば、「微生物ファースト」ということになろうか。

 これほど高い志を持った酒蔵は、日本中探してもなかなか見当たらない。これは現当主、福光松太郎社長の、先進的な経営によるものなのである。

 ■江口まゆみ 酔っぱライター。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本でも日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーのつくり手を訪ねる旅を続ける。近著は『ビジネスパーソンのための一目おかれる酒選び』(平凡社刊)。

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