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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】ブルースにも酔う感動の一杯 石川社長「感動する酒はアートでしかつくれない」 (1/2ページ)

★東京都「石川酒造」(上)

 東京にも酒蔵はある。主に多摩地区に集中しているが、その中のひとつ、福生市にある石川酒造は、「多満自慢(たまじまん)」という地酒と「多摩の恵」という地ビールをつくっている。

 石川家は、当主の石川彌八郎社長で18代目。代々裕福な地主で、石川社長が幼少の頃、徒歩15分の拝島駅まで、自分の家の土地しか踏まずに行けたという逸話もある。

 3000坪の敷地には、樹齢700年の大欅(けやき)が木陰をつくり、玉川上水の支流がさらさらと流れる中、整然と蔵が立ち並んでいる。

 深緑の頃は気持ちが良いし、真夏のビアガーデンは格別。秋もまた紅葉が美しく、初冬にはらはらと欅の葉が舞い散る風情も捨てがたい。

 併設のレストランで、地ビールや地酒をのみながら食事をし、史料館で酒づくりの歴史をひもとき、売店で気に入った酒を買って帰る…まさにここは、酒飲みのテーマパークなのだ。

 実際、年間10万人もの観光客が訪れており、最近では外国人も増えているので、元客室乗務員の女性社員が英語でガイドをしている。

 石川酒造のもうひとつの楽しみは音楽だ。蔵の中にホールがあり、石川社長率いるミュージシャンが、ブルースを奏でる。じつは石川社長、ハーモニカ(ブルースハープ)の名手なのだ。30歳から習い始めて20年。今ではプロのミュージシャンを従えてライブをやり、CDも出している。その収益をすべて寄付してきたため、紺綬褒章まで受章しているのだ。