記事詳細

【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】飲み飽きせず、しみじみ旨い「多摩の地ビール」 111年の時を経て事業再開 (1/2ページ)

★東京都「石川酒造」(下)

 東京都福生市にある石川酒造は、「酒飲みのテーマパーク」だ。3000坪の敷地の中には、本格的なレストランや試飲販売所、「史料館」が整備されており、年間10万人が訪れる観光スポットになっている。

 つくっているのは地酒「多満自慢(たまじまん)」と、「多摩の恵」という地ビールだ。18代目当主の石川彌八郎社長に、蔵を案内してもらった。

 明治時代に建てられた酒蔵は、国指定の有形文化財になっている。米は敷地の外に精米機が2台あり、ほぼ全量自家精米。麹室に製麹機はなく、すべて手作業だ。仕込みはタンク1本が3トンなので、少量仕込みと言ってよいだろう。ビン詰めにもこだわり、パストライザー(殺菌機)を使用している。

 特別変わったことはしていないが、実直な酒づくりをしている様子だ。その酒もまた、何の変哲もないが、飲み飽きせず、しみじみ旨い。あえて洗練された味にしないところが、いかにも「多摩の地酒」と思えて好ましい。

 敷地の一番奥には、自ビール工房がある。じつは石川酒造は、ビールについても明治20(1887)年に始めた歴史がある。その証拠に、庭には当時使われた仕込み釜が展示してあるのだ。

 明治のビール事業は3年で頓挫したが、それから111年後の1998年、平成の世に形を変えて再開したということになる。そして平成のビール事業の立ち上げに、専務時代から取り組んできたのが、石川社長なのである。