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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】「特上・山田錦」だけの大吟醸 銘酒「龍力」醸す本田商店、元禄時代から酒づくりに従事 (1/2ページ)

★兵庫県「龍力」(上)

 山田錦といえば、言わずと知れた酒米の最高峰。その産地、兵庫県の姫路市に、特A地区産の山田錦を100%使用している酒蔵がある。銘酒「龍力(たつりき)」を醸す本田商店である。

 たとえばロマネコンティの葡萄畑からは、世界最高のワインができるが、道一本隔てただけでも、他の畑からはロマネコンティと同じワインはつくれない。これと同じことが米にも言える。

 今や山田錦は兵庫県以外でもつくられているが、原産地兵庫の山田錦が最高とされる。その中でも旧東条町、旧社町(やしろちょう)、吉川町(よかわちょう)の中に、特A地区と呼ばれる特上の山田錦を産する田んぼが点在するのだ。

 特A地区の米は他の山田錦の1・5倍と高価だが、札束で顔をひっぱたいたところで売ってはくれない。何度も現地に足を運び、信頼関係ができなければ、米の一粒でも運び出すことは不可能だ。

 本田商店は元禄時代より、長年、播州杜氏の総取締役として酒づくりに従事してきた。現会長の祖父は、白鶴の杜氏として活躍もしていた。現在の場所に酒蔵をつくったのは、大正10(1921)年のことだ。

 40年前、灘や伏見の大手メーカーが低価格の酒を売り始めると、価格で対抗することが難しい地酒メーカーは、窮地に陥った。「良い酒を安く売る」という戦略に舵を切った蔵もある。その一つが一ノ蔵(宮城)の「無鑑査」だ。級別制度の中、一級の酒をわざと監査を受けずに二級で発売し、税金が安い分「安くて旨い酒」と評判になった、あの酒である。