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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】水と米を極めた「水尾」と「赤磐雄町」 取材で教わった日本酒の原点 (1/2ページ)

★2017銘酒回顧

 今年4月から始まったこの連載では、17軒の酒蔵をご紹介してきた。その中で印象に残った取材をふり返ってみたい。

 ひとつは6月掲載の長野県飯山市の酒「水尾」。廃業寸前の蔵を継いだ田中屋酒造店の田中隆太社長は、父の代には何のプランも設備もなく、惰性でつくっていた酒を、「おいしいからぜひ飲みたい」といわれる酒にしようと決意。酒づくりを勉強するうち、「蔵の井戸水が悪い酒質の元凶だ」と気づく。

 そこから理想の水を探して東奔西走。すると、蔵から15キロほど離れた野沢温泉村の水尾山の麓に、南アルプスの天然水よりやわらかい軟水が湧き出ていることがわかる。

 ようやく探し当てた名水。この水で醸した酒を「水尾」と名付けて販売したところ、近くの野沢温泉を中心にじわじわと売れ始めた。あれから苦節20年。今や「水尾」と言えば酒通には名の知れた銘酒となった。柔らかく優しい口当たりときれいな酒質は、水尾山の名水が支えているのだ。

 もうひとつは7月掲載の岡山県赤磐(あかいわ)市の酒「酒一筋」。利守酒造の利守忠義社長は、かねて地米・地の水・地の気候風土で醸した酒が地酒だと考えていた。地元の米を探したところ、同市には戦前ナンバーワンの酒米だった雄町(おまち)があったことを知る。しかし背が高く育てにくいため、戦中戦後を経て減少し、いつしか幻の酒米になっていた。

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