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【BOOK】跡目争い「辰巳屋一件」を題材に江戸を相手に無実訴える大坂商人の一念 朝井まかてさん「悪玉伝」 (1/2ページ)

 ■上げ潮ではなく左遷で自信を失った大岡越前守が登場

 デビューから10年。一貫して時代小説を書き続ける直木賞作家の新作は大坂の商家の跡目争いが将軍徳川吉宗、大岡越前守忠相(ただすけ)らを巻き込んだ大疑獄事件だ。無実を訴える商人の一念、そして名奉行・大岡の新たな面を描いた作者の境地とは。(文・竹縄昌 撮影・宮川浩和)

 --作品に“辰巳屋一件”としても知られる商家の跡目争いを選んだのは

 「大疑獄事件として知ってましたが、とにかく登場するキャストがすごいですし、それだけで小説的な事件です。デビューしたての頃に一度書こうと思ったのですが、タイミングというのかこの時期に書くことになりました」

 --興味の的はどこに

 「面白いのは、江戸時代の政治の仕組みや経済が銀本位となったり、裁判の仕組みができつつあったときで、また吉宗が御箱(目安箱)を置かなければ、大坂の一町家の事件が江戸まで行ったりしないわけです。また、唐金屋という泉州の大商人が出てきますが、唐金屋が牡丹の花作りで吉宗と関係があったというのは本当の話で、植物好きの私としてはそこに興味もありました。その時代を構成する要素のどれが欠けても起きなかった事件ですから」

 --複雑な要素が偶然集約して起きたと

 「偶然ではなく、主人公の吉兵衛にも言わせてますが、“相対済(あいたいすまし)”、今でいう示談で済んだ話をなぜわざわざ大きくしたのか。この理由は史料のどこにも書いてません。それは私自身が書きながら探ったことなんです」

 --雪だるま式に、大きな事態になっていきます

 「確かに、小さな悪や欲、ミスや忖度(そんたく)がいろいろ作用し合って転がっていき、とんでもない大きな事件になりました。死人も出てますから」

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