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【BOOK】「行動」によって人格も変えてしまう… 人間の不可解さ突き詰めたい 篠田節子さん (1/3ページ)

★「鏡の背面」 集英社/2000円+税

 人間にとって“他者の記憶”は本当に正しいのだろうか。いったい他者とは何者なのか。直木賞作家の最新長編サスペンスはそれを問いかける。取材開始から4年を経て出版した快作について聞いた。(文・竹縄昌 写真・宮川浩和)

 --執筆のきっかけは

 「人間の自我とか自己意識は私たちが思っているほどに確固たるものではなく、情動や認識がいかに変わっていくかといった人間の不可解さを突き詰められたらと思いました。人間の内側外側というものはなくて、内面から発したように見える行動が、フィードバックされることで、内面も常に変化していく。とても興味深いことです」

 --インパクトのある人物ばかり

 「自分の内側がいかに脆(もろ)くて自己意識が曖昧なために、自分が正反対の人物に変わっていく。それを表現するために、聖女と称えられたお嬢様・小野尚子と複雑な家庭に育って犯罪史上稀に見る事件の容疑者・半田明美という“毒婦”を対峙させました」

 --毒婦はモデルが想像つきますが、聖女の方はモデルはいますか

 「聖女は観念的にでも作っていけますが、それだと薄っぺらな人物像になって大人の読者はしらける。上流の家で育ってつらい思いをしてきて問題を抱え…という事例は意外に多くて、直接お話をしたり、噂話を聞いたりする機会もあり、そのあたりが反映されています」

 「一方、女性の犯罪者はどこか暗い輝きを帯びるんです。それにかわいいという言葉が結びついて描かれるケースも多い。でもここでは、かわいげ0%の人物を作っていきました。また完璧なコミュニケーション能力を持っている人が突然、“えっ”というような側面を見せることがある。そういう細かな事例を重ねて犯罪者像を作りました」

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