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【zak女の雄叫び】《zak女の雄叫び お題は「ちょっといい話」》認知症の人にどう接する? 子供にやさしく教える本

 認知症医療の第一人者で、昭和49年に認知症を鑑別する「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発した医師の長谷川和夫さん(90)が昨年10月、認知症の人とその家族を温かく描いた絵本「だいじょうぶだよ-ぼくのおばあちゃん-」(ぱーそん書房)を出版した。これが、実話に基づいたまさに「ちょっといい話」なのだ。

 絵本を読むまで筋書きを知りたくない人は、この先を読まないでくださいね。

 主人公の男の子が大好きなおばあちゃんが、認知症になってしまう。ランドセルを買いに行く約束を忘れたり、迷子になったり、イライラして怒ったり。

 家族の顔も分からなくなって「みなさんはどなたですか?」と言われたとき、娘は泣き、家族はシーンとなってしまう。そのとき、男の子はこう言うのだ。「おばあちゃんは、ぼくのおばあちゃんだよ。おばあちゃんがわからなくても、みーんなおばあちゃんのことをよーくしっているから、だいじょうぶだよ。しんぱいないよ、おばあちゃん!」。おばあちゃんは、ほっとして笑った。

 長谷川さんに私が初めてお会いしたのは、昨年2月。長谷川さんは一昨年、自身が認知症になったことを公表しており、そのことについてインタビューをしに行った。長谷川さんは以前から、認知症の人を尊重し、中心に置く「パーソン・センタード・ケア」を提唱していたが、自身が認知症になり、さらにその重要性を感じたといい、このように語っていた。

 「認知症になった自分とそうじゃなかった自分には、そんなに大きな差がない。連続性があるという感じがするんだ。だから、認知症じゃない人が認知症の人に接するときは、自分と同じ人だと思って接した方がいいと思う」「目線を同じ高さに、ということ。認知症だからといって、特別な待遇はしない。軽蔑しない、敬遠しない。逆に『特別な気持ちで接しないと』と見上げるのも良くない。自分と同じレベルだ。それがパーソン・センタード・ケアだろうと思う」

 ただ、家族だからこそ、そんな冷静な態度ではいられないこともある。「家族の顔も分からないなんて」と怒ったり泣いたりしてしまうのは当然だ。だが一方で、認知症の人の立場になれば、知らない人に囲まれて、自分が誰だかもよく分からず、不安でたまらないはず。男の子のようにやさしく声を掛けられたら、どんなに安心するだろう。

 あとがきで、長谷川さんは「家族や周りの皆さんは、その人の目を見て、ほほえんで、寄り添って、ゆっくり話を聞いてあげてください。優しく手を握ってあげてください。きっと安心して笑顔が戻ってきます」とつづった。認知症の人にどう接したらいいかを子供にやさしく教えるために、この絵本をぜひ使いたい。

 大阪の生活記者、42歳。