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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】本坊家の重厚な歴史と味わい… 鹿児島県「マルスウイスキー」 (1/2ページ)

 本坊酒造(本社・鹿児島市)が手がけるマルスウイスキーの歴史は古い。鹿児島で、芋焼酎の西世蔵元で知られる同社は、1949年には、すでにウイスキー製造免許を取得。60年に、山梨に洋酒生産の拠点となる工場を作り、本格的にウイスキー事業に参入した。85年には、「日本の風土を生かした本物のウイスキーづくり」を目指して、日本アルプス駒ケ岳山麓に、信州マルス蒸溜所を開設。だがウイスキーのダウントレンドが続く中、やむなく蒸留を休止した。

 モルト原酒の製造を再開したのは、2011年。じつに19年ものブランクがあったのだが、13年にはワールド・ウイスキー・アワードで、世界最高賞を受賞。原酒のポテンシャルの高さとブレンド力が健在であることを、内外に知らしめた。

 そして16年、満を持して開いたのが、今回訪れた津貫(つぬき)蒸溜所だ。ここ津貫は、鹿児島県南さつま市の中心地、加世田からほど近い山あいの盆地で、酒づくりに適した、山から湧き出る軟水と寒暖差のある気候が特徴だ。

 「貴匠蔵」と名付けられた、芋焼酎の蔵と一緒に建ち並ぶ石蔵は、ウイスキーや焼酎の貯蔵庫として使われている。

 特筆すべきは、ここが本坊酒造発祥の地であることだ。本坊家が地元の農産物を加工・販売する事業を興し、1909年に焼酎造りに着手。蒸留酒とともに歩み続けてきた。当時の日本でハイカラなお酒として圧倒的な支持を得ていた甲類焼酎の製造で成功し、現在は廃線になった、南薩鉄道津貫駅の引き込み線を使い、商品を運んでいたという。

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