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【続「心の老い」は克服できるか】認知症妄想の典型…男は“嫉妬”女は“物盗られ” (2/2ページ)

 「妄想には性差があります。なぜそうなるかについては分かっていません。ただ、若い統合失調症患者が荒唐無稽な妄想、たとえば『宇宙人が地球を攻めてくる』などと妄想をするのと比べると、現実的なものが多いんです。男は生理学的に嫉妬深く、女は物欲が強いのかもしれません。よく聞いていくと何らかのきっかけがあります」

 --と言うと

 「例えば、『妻が浮気をしている。毎晩いない。相手も知っている。隣りの旦那だ』と言う患者さんがいたので、奥さんに聞いてみると、『最近、違う部屋で寝かせている』と言うのです。理由は『いびきがうるさく、トイレが間に合わないのでオムツをさせている』ということでした」

 --女性の“物盗られ妄想”のほうは?

 「いちばん多いのが財布を盗まれた、です。たいてい、犯人は同居の家族。息子夫婦と同居している場合は、ほとんどがお嫁さんです」

 --現実の嫁姑関係が反映されている?

 「それはわかりませんが、こういうケースも。母親が交番に『泥棒が入った』と電話をかけて警官がやって来たのですが、その形跡がなく、あとで財布も見つかった。その後、母親が何度も交番に電話するので、娘さんが診察に連れていったという話です。そうして、認知症治療が始まったのですが、地方だったので、警官も理解があり、電話がかかってもちゃんと応対し、たまにはやってきて一緒に財布を探してくれたのです」

 --妄想は相手にせず、叱りつけたり、言下に否定したりするのはいけないと言いますが、どうしたらいいのでしょう

 「正解はないです。ただ、このケースでわかるように財布をいっしょに探し、本人に見つけさせることです。そうすれば、本人は傷つきません。だいたい、財布がある場所はわかりますから、探す振りをすればいいのです」

 ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。

 ■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『不要なクスリ 無用な手術』(講談社)ほか著書計67冊。

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