記事詳細

【ノンフィクションで振り返る戦後史】今ではあまり見られない討論相手へのリスペクト 保阪正康「三島由紀夫と楯の会事件」 (1/2ページ)

 1969年から70年は東大紛争から安保闘争へと続く政治の季節。一方、クーラーなど家電普及の時代だったが、70年に小学6年だった私の自宅には既にカラーテレビがあったとはっきり覚えている。同年11月、三島由紀夫が楯の会会員と共に、陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で東部方面総監を監禁し、バルコニーから自衛隊員に決起を促す演説をした。三島の姿はニュースで何度も流れたが、彼の着る「楯の会」制服がカーキ色だったのが明確に記憶にあるからだ。

 今年3月、映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が公開されたとき、観たいと思いつつ、コロナ禍で映画館に行くのをためらっていた。先日、シネコンで上映しているのに気づいて駆けつけた。スタッフは「先週から公開しましたが、お客さまが多く、より広いスペースに上映館を変えました」と話す。

 保阪正康の著書『三島由紀夫と楯の会事件』でも、69年5月に東大駒場キャンパス内大教室で行われた作家と東大全共闘との対論集会の模様が描かれている。

 三島は、肉体的暴力を論理化しようとする彼らの発想のプロセスに思想的共通点があるとして学生からの申し出を受けた。会場には1000人の学生が集まり、「三島を論破して立ち往生させ、舞台の上で切腹させて見せる」と息巻いていたという。警視庁から警護の申し入れもあったが、彼はたったひとりで会場に赴いた。

関連ニュース