記事詳細

【マンガ探偵局がゆく】水木しげるの大人気キャラ どこか憎めない、ねずみ男にみる人生哲学 (2/2ページ)

 作者の水木しげるにとっては特別に思い入れの強いキャラクターだったようで、水木自身の半生を昭和の出来事とあわせて描いた『コミック昭和史』では、全体の案内役をねずみ男に担当させているほど。水木の座右の銘である「なまけものになりなさい」を実践しているキャラクターなのだから無理もないのだ。

 ねずみ男をメインに据えた短編も多く描かれていて、怪しげな教祖や仙人、超能力者になったねずみ男が善良な市民をたぶらかす、というストーリーが多い。

 例えば、忍術の修行をする真面目な忍者の前に忍術評論家として現れ、仕官への紹介状を餌に着ているものや食べ物を巻き上げたり、貧しい職人の前に錬金術師として現れ、錬金術の目的は金ではなく「希望を得ることにあるんだ」とうそぶいたり。中学生の依頼人にはまだ早いかもしれないが、人生哲学の教科書にもなりそうな内容ばかりだ。

 さまざまな短編集に収録されているが、いちいち探すのはめんどう、などとねずみ男みたいなことを言うのであれば、1冊で読むことができる『ねずみ男の冒険』(ちくま文庫)がオススメだ。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。93年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

関連ニュース