【石井館長の魁!人生塾】観客も選手もオトナなムエタイ 判定で議論が起こってしまうワケ

2010.03.17

 前回に続き、格闘技のルールについてもう少し。現在、格闘技には総合競技と立ち技競技があります。前者は団体でいうと「UFC」、今はなき「プライド」、そしてアメリカの新興勢力である「ストライク・ホース」などです。現在、日本では「DREAM」や「戦極」がよく知られているところです。

 それに対し、後者の立ち技競技はK−1、キックボクシング、ムエタイなど。両者は似ているようでまったく異質。ルールも競技の性質もまったく異なるものです。

 上品にわかりやすく説明いたしますと、ラグビーとサッカー、バスケットボールとバレーボール。もっと言うと、オカマとニューハーフ、ゲイとホモぐらいに違うのであります。

 また、同じ立ち技でも、クリンチつまり掴んでからヒザ蹴り、ヒジ打ちで顔を切ってもよいムエタイやキックボクシングと、基本的に掴み、クリンチ、ヒジ打ちを禁止しているK−1では、戦い方も採点方法もまったく変わってくる。

 そもそもキックはムエタイを源流として生まれたもので、空手を母体として進化しているK−1と、性質が違うのは当然であります。

 タイでムエタイを生観戦された人は、ご存じだと思いますが、ムエタイは会場内で賭けが公然と行われています。胴元は1ラウンドが終了するまで賭けを受け付けますので、戦う選手たちも1ラウンド目はお互いに牽制し合い、賭けの成立を待つのが不文律です。

 したがって、プロモーターからは、ハラハラさせながらも紙一重の僅差で勝ち続ける選手が重宝されるのであります。

 判定もムエタイの特徴である、ミドルキックや首相撲からのヒザ蹴りが重要になり、パンチのポイントはあまり有効ではない。だから、試合を観に来た外国人旅行者が、パンチで積極的にアタックしていた選手が判定で負けて、不思議がるシーンによくでくわします。

 しかし、戦っている選手でセコンドの判定に文句を付ける者はほとんどいない。地元の観客もルールをよく理解しているので、抗議の声を上げることはありません。勝負を見極める目も肥えているので、最終ラウンドの5ラウンドがスタートすると、あきらめて席を立ってしまうファンが多いのにも驚かされます。さすが国技。戦う選手もレフェリー、ジャッジも、観客も競技をよく理解して、ルールの判断基準がすべて統一されているからこその反応です。

 逆に判定をめぐって揉めるのは、運営側と観客に競技への共通理解が欠けている証拠なのです。押忍!!

 ■石井和義(いしい・かずよし) 空手団体「正道会館」宗師で、格闘技イベント「K−1」創始者。著書に「空手超バカ一代」(文藝春秋刊)がある。