【石井館長の魁!人生塾】朝青龍にとどめを刺したのはダレ?

2010.02.10

 元横綱・朝青龍が大相撲を引退してしまった。

 それにしてもマスコミ報道の過熱ぶりのスゴイこと。思えば、ヤンチャな野生児のままだった朝青龍の横綱人生は、ずっとスキャンダルにまみれ、最後はマスコミによって引導を渡されてしまった。そもそも、わが国は、憲法で「暴力」は厳しく罰せられるのに対し、「ペンの暴力」にはいささか寛容である。言論の自由などという妙な免罪符があって、口では何を言っても、また多少オーバーに書いても基本的には罪に問われない。

 そう考えると、格闘技の世界では最強談義が喧しいが、本当に“強い”といえるのはマスコミではないかと思う。格闘家が身体を鍛え、技を磨くように、言葉によって相手に確実にダメージを与える方法を研究し、日々鍛錬しているかのようだ。彼らの手練手管の前では、怪力無双の暴れん坊朝青龍やボクシング世界チャンピオンの亀田兄弟も形無しである。格闘家がマスコミの攻撃から身をかわす術は、コワモテで接するよりもお友達作戦、つまり笑顔の爽やかな優等生でいるしかないのでありましょう。

 とはいえ、残念なことに品行方正でお行儀のよい格闘家はマスコミには取り上げられにくいという困った事情もあったりする。ボクシングWBC世界バンタム級王者の長谷川穂積選手は10回もタイトルを防衛しているにも関わらず、ストイックで真面目な性格ゆえ、話題にならない。

 私自身も大ファンでよく見知った仲ではあるのだが、強さとは裏腹の地味さも災いしてるのだろう。大体、理想の女性が「奥さん」というのはいいとして、尊敬する人物が所属ジム会長の「山下会長」ではインパクトゼロ。

 おまけに、趣味が「豆まき」で、好きな言葉が「花らっきょう」なのだとか。「1億円のマイホームを建てるのが夢」という2人のわが子を愛する子煩悩ないいチャンピオンなんだが…。

 「ひんしゅくは金を出してでも買え」というのは幻冬舎の見城徹社長の言。いまの世の中、スキャンダルも一種のプロモーションと捉えなければならないのでありましょうか? いやいやそんなことはない。格闘界には、ストイックで誠実な「英雄」の登場こそ、求められていると思うのでありますが…。押忍!!

 ■石井和義(いしい・かずよし) 空手団体「正道会館」宗師で、格闘技イベント「K−1」創始者。著書に「空手超バカ一代」(文藝春秋刊)がある。