前立腺がん検診 「PSA検査」利益と不利益

2016.01.07


年代別のラテントがんの保有率と、生検でがん細胞が見つかる人の有病率の比較【拡大】

 前立腺がん検診で行われるPSA検査の有効性について世界中で議論になっている。前立腺がんの手術治療には、EDや尿失禁などの後遺症のリスクが伴う。ヘルスプロモーション推進センターの岩室紳也医師(泌尿器科医)は、「PSA検診は前立腺がんの早期発見に役立たない」と指摘する。

 【過剰診断が多い】

 PSAによる検診(スクリーニング)の議論をめぐっては、日本の厚労省研究班や米国予防医学作業部会などは「勧めない」、日米の泌尿器科学会などは「勧める」と意見が分かれる。しかし、「PSA検診による利益と不利益の情報を受診者にきちんと提供することが大切」という考えは、世界的に一致している。

 利益と不利益とは何か。岩室医師は「利益は、前立腺がんと診断された48分の1人は命が助かります。不利益は、48分の47人は治療の後遺症に直面します」と話す。

 「検診推奨派は、EUの『PSA検診は前立腺がん死亡率を20%低下させる』という研究結果を検診を勧める根拠にしています。しかし、これには続きがあって『1人の前立腺がん死を回避するには48人を治療する必要がある』とPSA検診に過剰診断が伴うことを認めているのです」

 つまり、PSA検診で見つかった前立腺がん患者48人を治療すると、1人のがん死は防げるが、残り47人は治療をしてもしなくてもがんで死ぬことはないというのだ。PSA検診で命に関わる前立腺がんを見つけられる確率は2%ほどしかないことになる。

 【命を左右しないがん】

 では、PSA検診でがんの疑いが見つかり、精密検査(生検)でがんと診断された47人は何なのか。岩室医師は「ラテントがん」という。WHOは、生前、臨床的に前立腺がんの兆候がなく、死後の解剖で初めて前立腺がんの存在を確認した症例をラテントがんと分類している。

 「いまの時点では本当に治療を必要とする前立腺がんだけを見つけるスクリーニング方法がないのが実情です。いま言えるのは80歳の50%が前立腺がん細胞をもっていること。それに前立腺がんが見つかっても、がんで死ぬ確率は48分の1ということです」

 表は、岩室医師が調べた年代別のラテントがんの保有率と、生検でがん細胞が見つかる人の有病率の比較だ。ほとんど差がないことが分かる。

 治療でEDや尿失禁のリスクを伴う不利益と、48分の1の死ぬリスクを防ぐ利益、どちらを重視するかは患者の価値観によって違ってくるはずだ。 (水川信吾)

 

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