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荒戸源次郎

毒気と熱気吐くシネマの一匹狼(11/27)

 あらと・げんじろう 映画製作者、監督。1946年10月10日、長崎県生まれ。59歳。生後間もなく福岡市に転居し、九州大学入学時まで福岡に住む。学生運動に身を投じて上京するうちに、唐十郎主宰の劇団「状況劇場」と出合い、演劇の道に。72年、劇団・天象儀館(てんしょうぎかん)を旗揚げする一方、73年に大和屋竺監督「朝日のようにさわやかに」を皮切りに、映画製作を開始。80年、東京タワーの下にエアドーム型の映画館「シネマプラセット」を作り、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」を上映し、自主興行としては異例の大ヒットを記録した。95年内田春菊原作「ファザーファッカー」を初監督。2003年の監督作「赤目四十八瀧心中未遂」はブルーリボン賞作品賞などを受賞。
荒戸源次郎

【「ツィゴイネルワイゼン」大当たりも…】

 1980年4月、東京タワーの下にエアドーム状の映画館を設営し、当時は低迷していた鈴木清順監督がメガホンをとった映画「ツィゴイネルワイゼン」で当てた。大ヒットだった。製作から配給までを一手に行う「産直方式」を成功させ、億単位の金が転がり込んだ。32歳だった。

 その後も、鈴木監督がその美学を結実させる作品や、赤井英和主演で阪本順治監督のデビュー作「どついたるねん」など、印象深い作品を世に送り出したものの、映画プロデューサーとしては沈黙。多額の借金を抱えて行方不明…、世の中から消えた−とまで言われたことがあった。

 それが2003年に、車谷長吉の直木賞受賞作「赤目四十八瀧心中未遂」を自ら監督して、表舞台に戻った。梨園のお嬢様然としていた、女優、寺島しのぶが生々しいまぐわいを演じ、高い評価を得た。

 それまでの約10年−どうやって生活していたのか。

 「まあ、昔からそうなんだけど、頼みもしないのに支えてくれる人が10人、20人と、いたってことだね。自分は好きなことしかできないし、おべんちゃらも言えない…。好かれるための努力なんてしたことはないんだけど…」

 釣り三昧で、魚の干物を作ってたとか…。

 「そういうこともあったな。時には、『何もしないでいいから、来てください』と言われて月々、何がしかのものをあてがってもらったりしたこともある。で、本当に何もしないでいた。…半年、さすがに向こうも何か言ってきたもんだよ、『何かしないんですか』って」

【「日本映画は25年前と同じだよ」】

 福岡の名門高校から九州大に進むも、学生運動に染まり上京。それから演劇の世界に…というのがこの人の足跡なのだが、細部を聞こうとすると、はぐらかされる。

 「まあ、いいじゃないの。いろいろ言うと差し障りもあんだよ。オレは“厄者”だから」と言いながら、書かないでね、と念押しして語る話は人を引き付ける。そうした世の中の裏と表を駆け抜けた実体験に裏打ちされた話術と熱気がやはり、人を動かしてきたのだろう。

 昨年12月に東京・上野の国立博物館の敷地内に建てた映画館「一角座」で、花村萬月の芥川賞受賞作「ゲルマニウムの夜」(大森立嗣監督)を今年8月まで連続上映した。同座では12月17日まで「ゲルマ−」など荒戸プロデュース作を一挙上映している。

 「ゲルマ−の評判がよくてさあー。でも、賛辞ばっかりで否定する声が出てこないんだな。赤目−もそうだったけど、日本で映画の仕事に携わってる人ほど、あの作品に近づいてこないんだよ。見て見ぬフリしてるみたいなんだな。否定する声もどんどん出てこないんじゃ、日本映画は25年前と同じだよ。変わらないね」

 今年は、日本映画が洋画の興行成績を抜くといわれている。好調な業界にあって、この一匹狼が吐き出す、毒気と熱気はまだまだ必要なようだ。

【荒戸FILMアーカイブス】

 荒戸氏プロデュースの劇場映画9作がDVD化され、来年1月25日から3カ月連続で順次リリースされる。

 第1弾は「ゲルマニウムの夜」、「赤目四十八瀧心中未遂」、「外科室」の3作。いずれも荒戸氏のオーディオコメンタリーのほか、メーキング映像などの特典ディスク付デラックス版。価格は外科室が3990円、他8作は4935円。発売元・ジェネオンエンタテインメント。

ペン・谷内誠
カメラ・小野淳一