MENU

RANKING

モバZAKのご案内

iモード、EZweb、Yahoo!ケータイで大好評配信中

ぴいぷるホーム > ぴいぷる > 詳細

ひし美ゆり子

「アンヌの呪縛」脱ぐ(11/22)

  1947年6月10日生まれ、60歳。東京都出身。65年、ミス東京セニョリータ準優勝をきっかけに東宝へ入社。66年、「パンチ野郎」で映画デビュー。67年、「ウルトラセブン」の友里アンヌ隊員役で大ブレーク。72年、フリーとなりテレビ東京「プレイガール」などのテレビドラマや「鏡の中の野心」「忘八武士道」「好色元禄(秘)物語」など、多数の作品に出演。女優を一時引退後もエッセー、写真集などを出版し、多彩な活動を行っている。「真・女立喰師列伝」は現在、東京・渋谷のシネクイントでレイトショー公開中。23日夜には押井監督とのトークショーも開催。12月8日からは大阪・テアトル梅田、来年1月19日から名古屋・シネマスコーレで公開される。
ひし美ゆり子

【「出てくれるだけでいい」】

 周囲からは冗舌といわれるが、なぜか女性を前にすると、とたんに無口になってしまう−−それが不惑を過ぎた記者がいまだに独身でいる理由。もし、美人がグラッとくるような言葉が口から飛び出せば、少しは人生も変わっていただろうに…。唐突にこんなことを考えたのは、失礼ながら見た目はさえない風貌(ふうぼう)のある人物が「極上の殺し文句」で、怪獣世代の永遠のアイドルを口説いたという話を聞いたからだ。

 現在公開中の映画「真・女立喰師列伝」でアッと驚く出来事があった。今年還暦を迎えたひし美ゆり子さんが32年ぶりに映画主演。おまけにヌードシーンまで披露。今年はウルトラセブンの誕生40周年にあたるが、「アンヌ隊員」がその記念すべき年を体当たりで祝した格好だ。

 「ヌードのこと? わたしに会いにきた目的ってそのこと? なんだか、とっても大げさになっちゃってねえ…。わたしもビックリしたのよ。『アンヌ隊員が還暦ヌード』って週刊誌の見出しに載ったでしょう。だけど、うれしかったのは、そのとき載っていたキムタクの記事の見出しと活字サイズが同じだったこと。ちょっと入れ墨風のペイントをして背中を見せただけなのにねえ」

 久々にひし美さんと会った。電話ではけっこう話している。そういえば以前、こんなことがあった。何気ない会話の中で、やたらと押井守監督の名前が頻繁に出てきたのだ。

 「青木クン、わたし、ちっとも知らないんだけど、押井監督って有名な人?」

 押井監督といえば、アニメ界の巨匠。タイタニックのジェームズ・キャメロン監督や、マトリックスのウォシャウスキー兄弟にも大きな影響を与えたカリスマだ。

 その押井監督が昨年春、ひし美さんが経営する東京・調布のレストラン「アジアン タイペイ」を訪ねてきた。それが女優復帰の説得。押井監督はひし美さんの大ファンで、代表作といわれる「鏡の中の野心」が大のお気に入りだという。

【巨匠の殺し文句で一大決心】

 押井「映画を撮りませんか」

 頭を何度も下げ、唐突にこんなことを切り出した。

 ひし美「もう、引退しましたから…。アンヌがこの期に及んで映画に出たら、ファンの夢を壊すことになる。女優をやめたことに未練はありません」

 こう、きっぱりと断ったのだが、押井監督は引き下がらない。何度か、こうしたやり取りがあった。

 押井「俳優には定年などない。それが誇りと任務ではありませんか」

 そういわれると、ひし美さんもまんざらではなくなった。

 ひし美「だけど、わたしは演技がヘタだし、年齢が…」

 ここで、押井監督が必殺のひとこと。

 押井「芝居なんかしてくれなくていい。ひし美さんが出てくれるだけでいい。それから、今は撮影技術が進歩している。いくらでもキレイに撮れますからね」

 「当時、58歳。出産歴4回のわたしには極上の殺し文句だった。それで、出演を取りあえずはOKしたけど、これには落ちがあって、どんな作品か、いつ撮るかも決まっていなかったの。でも、それからが監督のスゴいところ。本当にトントン拍子で映画を撮ることになったのだから…。で、打ち合わせをしているうちに金魚の入れ墨をした役が決まったというわけ。だけど、よくよくうかがうと、監督は学生時代に、絶対にひし美ゆり子のヌードを撮るって決めていたらしいの。これって、確信犯よね」

【「家族にはヌードは内緒」】

 「立喰師」とは押井監督の妄想から生まれた架空の職業で、立ち食い店に出没する無銭飲食のプロたちのこと。監督の作品にはしばしば登場し、立喰師を主人公にしたアニメと実写映画も公開されている。「真・女立喰師列伝」はその3作目で、ひし美さんの役は「金魚姫 鼈甲飴の“有里”」。40年前、ひし美さんが20歳のときにウルトラセブンで演じたのは「“友里”アンヌ隊員」だった。

 「家族にはヌードということは内証だった。だけど、映画に出てよかったわ。アンヌの呪縛(じゅばく)から逃れることができたからね」

 押井監督は口八丁手八丁で夢を現実にしてしまった。記者にも、こんな実行力があれば、人生が変わっていたはずだが−−。

ペン・青木政司
カメラ・矢島康弘