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工藤夕貴

ニッポンのお母さんになりたい(6/24)

 くどう・ゆうき 1971年1月17日、東京都八王子市生まれ、37歳。84年、「逆噴射家族」で映画デビュー。翌年、相米慎二監督の「台風クラブ」で演技派女優として注目を集め、91年「戦争と青春」では日本アカデミー賞優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞。89年にジム・ジャームッシュ監督の「ミステリー・トレイン」に出演以降、「ピクチャーブライド」「ヘヴンス・バーニング」「ヒマラヤ杉に降る雪」などでハリウッド女優の地位も築いた。
 デビュー直後、やかんを持って走るインスタントラーメンのCMは日本中で話題に。「みんなマネしてましたよ。(記者の)隣の市の子が一気にアイドルになってうれしかった」と話すと、「あのころは個人的につらかったので、そう言ってくれるとうれしい」とほほえんだ。
工藤夕貴

【子供に読み聞かせ】

 取材場所に現れた彼女のいで立ちは、思わず目を見張るほどゴージャス。「さすがハリウッド女優!」と驚嘆したが、語られたのは嘆きの言葉だった。

 「いいお母さんの話が少ないんですよ」

 「昔は、いいお母さんのドラマがいっぱいあった。だから、いい子供がいっぱい育ったし、素敵なお母さんになれる女性がイチバンだった」

 たしかに当世、虐待やネグレクト、母子関係をめぐる悲しいニュースばっかりだ。昔は、かっぽう着姿の立派なお母さんが登場するホームドラマがあって、視聴率も高かった。「お母さんが似合う女優ランキング」なんてのも盛んだったな。

 「いまは、『お母さん』であるよりもまず『女性』として素敵じゃなかったらダメという風潮。お母さんという生き方を推奨していないんですよ」

 心底嘆く。いいお母さんがいないといい子が育たず、いい国にならないとも。

 「もし、この先、私が子供を持つなら、仕事はするけれども子供を第一に考える。私、素敵なお母さんになれると思うんですけど、タイミングがね…」

 だから、せめて自分の仕事を通じて、その気持ちを表現したいと思った。公開中の映画「春よこい」(三枝健起監督)への出演を決めたのも「世の女性に、子供を幸せにしてあげられるお母さんになりたいという気持ちを持ってほしい」という思いから。

 佐賀県のひなびた港町・呼子を舞台に、事件を犯して逃亡中の夫(時任三郎)を待つ妻と一家のストーリー。父が戻ってくると信じている息子と認知症の義父(犬塚弘)を抱え、懸命に生きる母親(工藤)の姿がせつない。

 ただ、主演とはいえ地味な物語だ。最近でも「SAYURI」「ラッシュアワー3」などのハリウッド大作でメーンキャストに名を連ねた女優にしては役不足とも思えるが、「家族もの、実は大好きなんです。複雑な家庭に育ったから…」。

 父は「あゝ上野駅」の歌手、故・井沢八郎さん。「家庭不和の状態がすごく長く続いて、家族でそろって楽しかったとかいう思い出も、すごく少なかった」

【「家族もの、実は大好き」】

 自身も、幼くして芸能界入りしたことで、学校でイジメに遭っていた。家族が仲良しになることをいつも想像していた少女時代。その体験が「温かい家庭を持ちたい」という強い願望、家族ものを演じたいという意欲につながったのだという。

 「こういうことを話すの、全然、気にしないですから」

 父とは晩年に和解し、最期を見送った。穏やかに語る表情が美しい。

 3年前に拠点を日本に戻し、いまは静岡・富士宮で有機野菜や無農薬米を作っている。

 10年近いハリウッド暮らしの最初は「ワンパターンな役しかなかったので、すごく苦しかった」と振り返るが、いまや知名度もあがり、日本にいても出演のオファーが届く。恩人ジム・ジャームッシュ監督の最新作の撮影も済ませた。

 「せっかく日本に帰ってきたから、いろんな役をやってみたくて。主役だろうが脇役だろうが関係なく」

 時に厳しく、時に優しく、そしていつでも頑張り屋。自分自身にも好き嫌いを許さない自制心。ニッポンのお母さんを演じる“準備”は万端だ。