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【竹中直人】ハリウッドはお断り だって半年も家族と離れるなんてヤダ!ヤダ!絶対ヤダ

2009.11.04


竹中直人【拡大】

 東京・新宿の、とある飲み屋。中年男が2人、静かにグラスを傾けている。すると、店内から「太陽のあたる場所」が流れてきた。スティービー・ワンダーの名曲だ。懐かしい! 学生時代にバンド活動をしていた、それぞれの記憶が蘇る。そして2人は、おやじバンドの話に夢中になり…。

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 そんな酒飲み話から、1本の映画が生まれた。男のひとり、竹中直人が主演する映画「僕らのワンダフルデイズ」(星田良子監督、7日公開)だ。

 「8年ぐらい前に親しい友人と飲んでいたとき、2人で盛り上がったんです。おやじバンドって熱いよね。そんな映画やりたいよね。ボロボロになった男たちがバンド組んでさ。最後は乗っていたツアーバスが転落する。でも、みんな笑いながら死んでいく。そんなのどう? おもしれえな、絶対にやろうぜって」

 その親しい友人って、忌野清志郎さんでは?

 「実はそうなんですけどね。あんまりそれには触れたくないんです。清志郎さんと一緒に企画したのが表に出ると、自分の気持ちが嫌だなあと思って。亡くなったことに便乗しているみたいで…」

 途端に口が重たくなった。がん性リンパ管症で死去した清志郎さんの葬儀で、号泣しながら弔辞を読み上げた。あれから半年、悲しみは深く静かに潜行しているのだろうか。

 役どころは、末期がんだと知ってしまった平凡なサラリーマン。残された時間で、高校時代の仲間とバンドを再結成。コンテスト出場に最後の夢を託す。

 「疲れる芝居でしたよ。この年になると、死っていうのが身近になっているから。でも、それを強く打ち出してしまうと、別の形になってしまうので。最初に考えたような、ぶざまで暗い話でもありません」

 音楽アドバイザーが奥田民生。竹中率いるバンド「シーラカンズ」のメンバーが宅麻伸、斉藤暁、稲垣潤一、段田安則。おかしくも切ない、どんでん返しもある。愛すべきおやじたちによる、おやじ世代への応援歌になっている。

 「僕はいつも台本を読まない。基本的に役作りもしない。話の流れを知っている芝居をするのが嫌だから。ノリ一発って感じ。今回は監督も脚本も女性だったので、同世代の出演者と『こんなこと、言わないよなぁ』とか言って、瞬発力でせりふを変えていった。とにかく、おやじたちが元気で頑張っています」

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 俳優、監督、エッセイスト、絵本作家。さまざまな顔を持つが、もともとはミュージシャン志望だった。高校時代にはヤマハ・ポプコンの地区大会にも出場した。「でも、すごく気がちっちゃいもんで、上がっちゃって歌詞を忘れてしまった」。そのトラウマを抱えながら、いまはプロとしてライブをこなす。

 それでも本業は、やっぱり俳優。今年公開の出演映画だけで7本になる。ちょいと働きすぎでは?

 「スケジュールが合えば、来る仕事は拒まず。あなたとやりたいと言われて、ホンを読んでからね、なんて僕には言えないですもの。芸術なんて、やってるつもりもないですし」

 そうは言っても、ハリウッドからのオファーは断ったそうで。

 「その野心は一切ない。世界的に有名になんかなりたくないし、面倒くさいし。第一、半年も家族と離れるなんて、ヤダ、ヤダ、絶対にヤダ!」

 元アイドル、木之内みどりとの間に、18歳の娘と12歳の息子がいる。「掃除、洗濯が大好き」という彼のエネルギー源は、どうやら家庭にありそうだ。

ペン/田中宏子

カメラ/緑川真実

プロフィール 竹中直人(たけなか・なおと) 1956年3月20日、横浜市生まれ、53歳。多摩美術大学在学中、映像演出研究会で8ミリ映画製作に励む一方、素人参加番組でコメディアンとしても注目される。84年に映画初出演。「シコふんじゃった。」「Shall weダンス?」で数々の助演賞を受賞。NHK大河ドラマ「秀吉」では主役を務め、国民的俳優に。91年には「無能の人」で監督デビューし、ベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞などに輝いた。6本目の監督作「山形スクリーム」に続き、主演映画「僕らのワンダフルデイズ」が7日に公開される。

 

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