ぴいぷる

【が〜まるちょば】笑いあり涙あり…でも言葉は完全無欠のパントマイム

2010.06.21


大道芸人コンビの「が〜まるちょば(がーまるちょば)」【拡大】

 モヒカンにサングラスで、何もしゃべらない。“こわいお兄さん”に見えるが、ステージを見ればイメージは一変する。

 意味のない言葉(音)を発して客席をあおり、自分たちが持ち上げられない重い(正しくは重そうな)かばんを観客の女性に軽々と持ち上げさせ、会場を爆笑の渦に。

 幕が変われば、「マイケル・ジャクソン」や「ブルース・リー」、「挫折からはい上がるボクサー」、「その恋人」など、さまざまなキャラクターに変身。バックに音楽が流れるが、言葉は一切ない。体の動きだけで観客を笑わせ、泣かせる−これが彼らのパントマイムだ。

 モヒカンの色が赤いのがケッチ!で、黄色がHIRO−PON。サングラスを外した目は2人ともやさしい。だが、HIRO−PONは左目を6針縫っていた。

 HIRO−PON(以下H) 「北海道公演でボクサーを演じている最中、暗転になったときに方向を見失ってスピーカーにぶつけちゃって。『汗がよく出るなあ』と思ったら、血でした」

 ケッチ!(以下ケ) 「僕も驚きました。『このまま続けていいの?!』って」

 H 「お客さんは本物の血じゃなくて、演出と思ったみたい。でも、失敗は失敗。恥ずかしいです」

 素顔はいたってまじめ。パントマイムの話題になると舞台とは一転、冗舌だ。

 H 「パントマイムは普通の芝居より歴史が古い。ギリシャで、王様の前で身ぶり手ぶりの芸を始めた人が元祖といわれています。ないものをあるように見せる技術としか思われていないけど、本来は、笑いや悲しみといった感情の変化を含めて表現するものなんですよ」

 ケ 「結成当初から『007』や『スター・ウォーズ』、西部劇をモチーフにネタを作っていました。壁を触るしぐさもそうだけど、パントマイムはお客さんの記憶に頼る。だから、有名な映画の力を借りると感情移入がしやすいんです」

 それぞれ約20年前に「1人で、しゃべらなくてもできる」(HIRO−PON)「手ぶらでできる」(ケッチ!)という理由で、パントマイムを始めた。長野で開催されたパントマイムのフェスティバルで初めて出会った。

 コンビ名はグルジア語で「こんにちは」という意味。きっかけは、ソロ時代に2人が参加したドイツのフェスティバルだった。

 ケ 「グルジアのダンサーの子供たちと知り合って、唯一理解できた言葉が『ガーマルチョバ』。食事のときも、『いいショーだったね』って伝えるときも『ガーマルチョバ』で意思疎通していました」

 髪形をモヒカンにしようと考えたのは、HIRO−PONだった。

 H 「僕はブルース・リーのようなおかっぱ頭だったんですけど、パンクが好きで。ストリートでパフォーマンスするときに目立てると思ったんです」

 言葉の壁を越えるパフォーマンスを26カ国で繰り広げ、成功をおさめてきたが、「パントマイムをポピュラーにしたい」という思いは尽きない。

 ケ 「パートタイムとかパントタイムという人もいますからね。それにパントマイムは、お客さんの想像力が必要。いまのテレビのように、映像、音声、文字で伝えるものに慣れすぎると楽しめない。まずは多くの人に楽しんでもらうため、ハリウッドで僕らの映画を作るのが夢です」

 H 「パントマイムというと、『つまらないやつでしょ』っていわれる。それは、世間で知られているパントマイムが実際につまらないから。年をとったせいか、僕も他の人の表現から受ける刺激が少なくなってきた。それなら自分で、刺激を与えられるものを作るのが使命だと思う」

 夢を形にするため、ステージに立ち続ける。

ペン・宇野貴文 カメラ・寺河内美奈

プロフィール 本名、生年月日は2人とも非公表。静岡県出身のケッチ!と埼玉県出身のHIRO−PONが1999年に結成。パントマイムと笑いを組み合わせた「サイレントコメディー」を展開。海外でも評価が高く、世界三大演劇祭のひとつである英国の「エジンバラ・フェスティバル・フリンジ」の「ダブルアクトアワード」など各賞を受賞。HIRO−PONのソロ公演「SEX,HIRO−PON,MIME&ROLL」が25−27日、東京・銀座の博品館劇場で上演される。

 

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