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【荘田由紀&鳳蘭】舞台に羽ばたくDNA

2010.08.17


荘田由紀&鳳蘭【拡大】

 これがDNAなのか。舞台「劇団朱雀特別公演 極付早乙女太一」で会場に響く笛問屋田原屋の娘、お京(荘田由紀)の声は、まさに母(鳳蘭)譲り。澄んで、よく通る声は練習だけでは培えない。

 鳳「この子はすぐ落ち込むタイプでね、盛り上げるのが大変。この前も家で悩んでいるのを見て、『ちゃんとやってるんだからいいのよ』って言ってやったの。舞台ではね、演技のうまい、へたは関係ない、華がある、ないが大事。見ている人が好感を持てるかどうかなの。舞台では頭からつま先まで見えるでしょ。隠れられない。そこで、思いやりがあったり優しかったり…。そういう、人としての芯の部分が表れるのよ」

 うん、うんとうなずく荘田。

 鳳「私は人の好き嫌いがないけれど、この子は人見知り。OLをしている3つ上の姉は、私似かな。英語がしゃべれなくても、海外では単語を並べて話をつけちゃう。私は宝塚時代、大階段を下りながら『ビギン・ザ・ビギン』を英語で歌ったとき、途中で歌詞が出てこなくてね。オケ(オーケストラ)を止め、階段の上へ戻って、やり直したの。そのあとは、きちんと歌も歌えて拍手喝采。失敗することで対処ができるようになるのよ」

 −−ご自宅でも鳳さんが話すことが多い?

 荘田「はい。私は聞くほうです(笑)。でも、母は懐がでかい人。ダメって言われたことがないんです」

 鳳「宝塚にどうしても入れたかったから、姉も4歳からバレエとピアノを習わせたんです」

 荘田「ピアノ、バレエ、水泳、習字で1週間が埋め尽くされていました。でも、遊びたい盛りでしたからね。辞めたいと言ったら、続けなさいとも言われなかった。いまになると、なんで辞めちゃったんだろうって思いますけど」

 鳳「私の父は、左手でお茶碗を持たないと、『お母さん、包丁を持ってきて』と言うような厳しい人だったの。聞いた私は、何で包丁なんだろうって想像を巡らせる。あっ、お茶碗を持たないで食べているから、左手を切るぞって意味なんだ、ごめんなさい…ってなるわけ。親が厳しかったから、私は小さな嘘をつき続けてね。だから子供には嘘をつかれるのが嫌で、甘かったのよ」

 荘田「伸び伸びと育てられたと思います。小さいころから、よくハグをしてくれました。だから、どんなに怒られても、母から愛されている自覚がありました。悪いことをして母を悲しませたくなかったし。すれ違いの生活だったけど、愛情は感じていました」

 鳳「子供の前で素(す)を見せましたね。娘が小学生のころ、肝臓が悪くなって、医者から十分な睡眠をとるように言われたの。夜遅くまで舞台をして、朝は早起きして娘のお弁当を作っていたんだけど、子供たちに『ごめんね。ママ、肝臓が悪いの。朝、起きられない』と言って、子供たちを人に頼んで寝ていたら数値が戻りました」

 「円形脱毛症になったこともあったわね。夫からは、家庭を完璧にしていたら仕事をしてもいいって言われていたの。家事、子育てをして、舞台でセリフを覚えていたら、足下がふらついて階段から落ちちゃった。もう離婚したくて、作詞家の岩谷時子さんに話したら『退団の記者会見で、結婚したい、子供を産みたいって世間を騒がせて結婚したんだから、いま別れたら世間が許しませんよ』と。それで由紀が生まれたんです」

 荘田「(うなずいて)いままでは母でしかなかったけれど、同じ仕事について、偉大さを感じます。母が稽古場へ入ると自然に明るくなるんです。その場のテンションが自然に上がる。真似てみたら、すごく不自然になってしまって…。母を越えたい? そう思ったらダメになりますね」

 −−けんかは?

 鳳「新劇の人は飲みながら演劇論を交わすでしょ。帰ってくるまで心配で眠れないから、あまりにも遅いときに『そんなふうに育てた憶えはない!』って怒ったら…」

 荘田「『育ててないじゃない!』って(笑)。けんかにならないんです」

 2羽目の鳳は、どんな羽ばたきを見せるか。

ペン・栗原智恵子 カメラ・古厩正樹

■おおとり・らん 本名・荘田蘭、1946年1月22日生まれ、64歳。神戸市出身。宝塚歌劇団の元星組男役トップスター。愛称はツレちゃん。中華同文学校卒。64年、「花のふるさと物語」で初舞台。170センチの長身を生かし、宝塚の男役で2番目に口ひげを付けた。79年に退団し、翌年、中国人医師と結婚。2女をもうけるが、86年に離婚。2005年、紫綬褒章受章。10年、松尾芸能大賞を授賞。ココ・シャネルを描く舞台「COCO」(12月3−19日、東京・ルテアトル銀座)などの再演が予定されている。
■しょうだ・ゆき 83年4月2日生まれ、27歳、東京都出身。成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒業。05年、文学座研究所入所、10年3月、舞台「女の一生」(演出・江守徹)で故・杉村春子さんの当たり役、布引けいを好演。

 

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