ぴいぷる

【菅野美穂】新たな出会いで輝き生まれる演技と笑顔

2011.02.03


菅野美穂【拡大】

 多くの男、特に日本の男は臆病な生き物だ。たとえば、ニューヨークのキャリアウーマンたちを描いた米テレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の登場人物みたいな生き方にあこがれる肉食系の女性が目の前に現れたとしよう。平然としていられる男は、いまの日本に一体どのぐらいいるだろうか…。

 で、たいていの不甲斐ない男たちのミューズであり続けるのが、この人。男心をとらえる、はかなげでみずみずしい魅力はデビュー以来変わらない。

 「今年でもう34歳。デビューしたころを振り返ると、当時はとにかく眠かった気がします。毎日追いつめられて、ただただ必死で。いまは少し自由になれましたけど。それに…インタビューを受けても、相手が何を聞き出したいのか、多少はわかるようになってきましたし。アハハ」

 そうそう、この無邪気そうに笑う顔がファンにはたまらない。しかし、このさわやかスマイルのウラには壮絶な女優人生が詰まっている。自分がイグアナに見えるトラウマを抱えた少女や多重人格者、聴覚障害者…。これまで数々の難役を見事に演じてきた。

 そして今回、映画「ジーン・ワルツ」(5日公開)で演じるのはクールな産婦人科医。

 「役の第一印象ですか? そうですね、いつも冷静で、ポーカーフェースで仕事をこなしていく。おまけに正義感が強い。私とはまるで違う人格ですね」

 原作は『チーム・バチスタの栄光』で知られるベストセラー作家・海堂尊氏。医師不足にあえぐ医療現場の実態や、代理母問題などに鋭く切り込んだ社会派作品だ。

 「演技の勉強のために産婦人科医の方のお仕事を拝見しました。現場は想像以上に過酷でしたね。精神的にも肉体的にもヘビーな現場にあえて身を置いている。産婦人科医は職業というよりも、ひとつの生き方なんだと思いました」

 さまざまな役柄を演じてきたが、本格的な医療サスペンスは初めての挑戦だ。

 「(主人公は)周りから『完璧な人間』と思われています。でも、そんな彼女にもさまざまな迷いや葛藤がある。今回は、そうした完璧な顔の裏側にある揺らぎをできるだけ膨らませて表現するように心がけました」

 役柄にかける思いがよく現れているワンシーンがある。いつも男勝りで毅然とした主人公が、ひと時だけ“女性”に戻るラブシーン。そのギャップがあまりに鮮烈で、とにかく色っぽい。

 「あっ、思惑通り。なんて、フフフ。でも役者にとっては、表情でもセリフでも、お客さんの記憶の中にひとつでも残ればそれでいいと思っているんです。だから、そう感じてもらえただけでうれしいですね」

 たぐいまれな演技力を支えているのは、役に向き合う真摯な姿勢。

 「これまでの経験で、テクニックというか知恵は付きますよね。でも、なるべく使いたくないんです。その時、その役を『女優・菅野美穂』にはめ込むような役作りはしたくないんです」

 それってつまり、「初心忘るべからず」ってことなのか?

 「そうですね…、たとえば野球でいうと、プロ野球と高校野球の違いということでしょうか」

 そのココロは?

 「もちろん、プロのプレーは洗練されていてスゴイ。高校野球にはそういうプロフェッショナリズムはないけれど、なんともいえない輝きがありますよね。その輝きを目の当たりにすると『楽なところでやってちゃいけない』って考えさせられてしまうんです」

 輝きを保つためには、役柄との“新鮮な出合い”が不可欠。そのため、生活にメリハリをつけるのだという。

 「役にのめり込むより切り替えることのほうが大切なんです。だから、私はひとつの役が終わると旅に出る。そこで自分のバイオリズムを取り戻して、また次の役にのぞむんです」

 ただ、今回は演じている最中に新しい出会いがあった。

 「出産したばかりの赤ちゃん! 神々しくて、生々しくって。生命ってこういうもんなんだなぁと改めて思いました」

 母性に目覚めた我らのミューズ。記者にはあなたが神々しく輝いて見えました!

(ペン・安里洋輔 カメラ・荻窪佳)

プロフィール かんの・みほ 1977年8月22日生まれ。埼玉県出身。92年、淑徳与野高在学中に15歳でデビュー。93年、「ツインズ教師」でドラマデビューし、96年、「イグアナの娘」の主演で注目される。2002年の「アルジャーノンに花束を」、07年の「働きマン」など、ドラマや映画など出演多数。98年には聴覚障害者役でエランドール賞新人賞、02年の北野武監督作品「Dolls」ではゴールデン・アロー賞映画賞を受賞した。

 

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