ぴいぷる

【谷田千里】この男ハカリしれない「健康に関するものは何でも測れる会社に」

2011.02.15


谷田千里(タニタ社長)【拡大】

 「3年前の2008年、親の後を継いで社長になりました」と言われると、どうしても“ぼんぼん”のイメージが浮かぶ。だが、タニタの谷田千里社長はまったく異質の経営者。一言で言うなら「健康ハカリオタク」だ。

 「僕はタニタを、健康に関するものは何でも測れる会社にしたい」。そう熱弁するウラには、とてつもない野望がある。

 「人類は1世紀近くダイエットと格闘しているんです。皆さん、いろいろなダイエット商品を買っては物置の肥やしにしているじゃないですか。これはお金と時間のムダです。だから、僕が社長でいる間にこの問題にケリをつけると決めました」

 大言壮語とも取られかねない宣言の後、谷田氏は靴下を脱ぎ、同社製の体組成計の上に乗った。

 「部位別の体脂肪は、うまく測らないと誤差が出てしまうんですよ。ご存じでしたか。この製品は、誤差が出にくい体組成計です。(測るときに上げる)この腕の位置が重要で、高すぎてもダメ。でも、ウチの商品で測れるものは体重や体脂肪だけじゃないんです」

 そういって谷田氏はタオルサイズの睡眠計を取り出した。

 「布団の下に敷いて寝るだけで、睡眠の状態が分かります。睡眠障害は健康の大敵です。よく眠れないとイライラしてしまいがちですが、これも健康の大敵です。そういう方はまず、この睡眠計を使って、ご自分の睡眠を調べてみてください」

 熱弁は続く。「次に、私のネクタイをご覧ください。四角い箱がついているのが分かりますか」

 新種のネクタイピン、じゃないですよね。

 「これは『カロリズム』といって、身につけているだけで自分の1日の総消費カロリーが測れるスグレモノです。下半身はもちろん、上半身の軽い動き、たとえば料理しているときの動きまでもちゃんと測れます。ご自分の消費カロリー量が分かれば、結果的に食べ過ぎないようになりますよ」

 たしかに、自分の必要カロリーを知って制限すればやせますよね。でも、それが簡単にできないから、人類は1世紀も格闘しているのではありませんか?

 「カロリー制限しても、おいしい食事は採れます。これは、弊社の社食メニューを集めた本『体脂肪計タニタの社員食堂』です。カロリー制限をされている方でも、お食事をおいしく召し上がっていただけるように500キロカロリーのメニューを集めました。これで、社員もやせたんですよ。本はおかげさまで第2弾と合わせて180万部を超える発行部数となりました」

 “測りっぱなし”ではなく、その数値を生活に生かす方法まで提案する。ここまで徹底していると、本当に人類をダイエット問題から救いそうな気がするから不思議だ。

 「こんなふうにお話しすると、順風満帆にやってきたように見えると思いますが、私がタニタを継いだ3年前はお世辞にも業績が良いとは言えず、状況は日々悪化していました。いまも売れない製品はたくさんあるし、順調とは言えません。でも、1923年の創業以来、タニタが培ってきた『まじめさ』を大切に、お客さまに喜ばれる製品を提供していきたい。そうすればきっと、会社の財務体質も健康にできると思います」

 ダイエット問題の解決から社業の安定まで、“はかりしれないハカリオタク”の谷田氏なら、きっとやれそうな気がする。

 ペン・石島照代/カメラ・桐山弘太

 ■たにだ・せんり 1972年6月6日生まれ、38歳。東京都出身。子供のころは「早く家を出たくて、会社を継ぎたいと思ったことは一切なかった」。90年、立教高校を卒業後、「手に職をつけて自立したくて」父親の猛反対を押し切って調理師学校へ入学。しかし、椎間板ヘルニアに悩まされ、調理師を断念。95年、佐賀短期大学(現・西九州大学短期大学部)食物営業学科から佐賀大学工学部へ編入。97年に卒業後、アミューズメント施設企画・運営会社のニュートンを経て、98年、船井総合研究所入社。2001年、「苦しみや悲しみなんか、まったくないスーパーマンのような経営者だと思っていた」実父・谷田大輔前社長の強い要請でタニタに入社。タニタアメリカ取締役を経て、08年5月に社長就任。調理師と栄養士の資格を持つ。

 

注目情報(PR)