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【纐纈歩美】“美人サックスプレーヤー”というレッテル

2011.04.21


纐纈歩美【拡大】

 彼女に驚かされた。昨年の晩夏、デビューアルバム『STRUTTIN’』の完成度に…。音に心があり、練れている。若いのに完全にスタンダードジャズしていた。

 ライブを見る機会があった。昨年の暮れ、思わず聴き入ってしまった。その奏法は優しく、柔らかく、それでいて力強さが底流にあった。“美人サックスプレーヤー”というレッテルなどいらない。

 「お世話になります…」。礼儀正しく頭を下げた。白をベースに紺の花模様のあるワンピース姿でインタビューに現れた。さりげない化粧を施した大人の22歳、清楚な装いは習い事帰りのお嬢さん風である。

 「ジャズは父の影響かな…。で、その魅力にとりつかれて、これで生きようって」。どうしてアルトサックス? 「音…。一言で“音の魅力”ですね。音色に惹かれたんです。高校時代、最初(チャーリー)パーカーを聴いて、音もさることながら、この人、格好いいって…。視覚的な要素もありましたね」

 チャーリー・パーカー(1955年没)、アルトサックス奏者の鬼才である。40年代から50年代半ばに活躍、麻薬に溺れ34歳で短い生涯を閉じたが、伝説はいまなお残る。あのアカデミー監督、クリント・イーストウッドが最初にメガホンをとった映画が、パーカーの生涯を描いた『バード』(88年)。彼の存在がリスペクトされているゆえんである。

 「でも、最初パーカー聞いたとき本当にうまいのかなって(笑)。みんながいいって言うから間違いないだろうって…。けど聞くうちに誰よりもすごく格が違うと思いましたね」

 サックスの魅力に目を輝かせる。「パーカー以外ではキャノンボール・アダレイ(75年没、46歳)は温かく、クール・ジャズ系でリー・コニッツ(83)やアート・ペッパー(82年没、56歳)の独特のリズム感に惹かれて…」。Jポップやヒップホップ系に熱を挙げる年代なのに、出てくる名前はおじさんもビックリの往年の大スターばかり…。

 「記憶にはないけど、小さいころのビデオを見るとジャズのリズムに合わせて踊ってるんですね。ま、小中学のころはJポップも聞きましたけど、高校ではもう…。仲間外れにされないよう話を合わすために一応、ORANGE RANGEやEXILEなんかも聞きました(笑)」。ジャズDNAにブレはない。

 『纐纈歩美』。姓が難しい? 「本名です。最初はひらがなとか、“AYUMI”なんて案もあったんですが。堂々とやっちゃおうって。インパクトもあるし、逆に覚えたら忘れないし、ね」。

 名古屋、岐阜を中心に活動していたが、昨年7月にメジャーデビュー後は全国ツアーもこなし、ファンも増えた。「将来は、やっぱ世界にも出たいですね。今年に入って英語を習い始め、ランニングもちょっと…」。

 夢は尽きないが、ジャズ界のマーケットは厳しいといわれて久しい。「けど未来あることを信じています。以前にやっている人がいれば、それ以上のものができるわけで、それは広がっていくと思うし、広げなくては…」。そんな彼女が、4月からのNHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」のエンディング紀行テーマ曲を演奏している。

 「ジャズを知らない人にも聞いてもらえる。いいチャンスだと思っています。いい音楽なら誰にでも聞いてもらえるし…」

 2枚目のアルバム『Daybreak』が今月20日に発売された。まさに新たな“夜明け”に向け、彼女は歩みはじめた。(ペン・清水満 カメラ・大山実)

 ■こうけつ・あゆみ 1988年10月5日生まれ、22歳。岐阜県出身。地元ビッグバンドに所属する父の影響で幼いころからジャズに親しむ。3歳からピアノを習い、中学の吹奏楽でアルトサックスに転向。高校卒業後、甲陽音楽学院名古屋校を経て地元中心にライブ活動。2010年7月、メジャーデビューした。血液型B。趣味は美術館巡り。「絵も音楽も構成と色が大事」という。お酒を愛し、現在はアロマテラピーに癒やされる日々。

 

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