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【石井聖子】「気持ちいいことが大事」素直になれる心地良さ

2011.07.07


石井聖子【拡大】

 こんな昭和の歌謡曲が聴きたかった。もう会えなくなった人の姿を、思い出の駅で追う切ないバラード。今、この曲をさまざまな思いで受け止める人がいるだろう。

 ラテンの女王といわれた坂本スミ子を母に持つ彼女にとって11年ぶりの新曲「この…駅で」は、作詞家、大津あきらさんの遺作。曲を手がけた浜圭介氏から託された。

 「浜先生からギター1本で歌われたカセットテープをいただきました」

 きっかけは3年前の静岡・伊東の断食道場だった。

 「断食をご一緒させていただいたのがご縁で、ふらりとライブに来ていただくようになり、『君も何年もうたっているようだけど、歌謡曲を歌う気はあるかい? この曲のイメージに合う人を探していたんだよ』と」

 それは古くて新しい曲だった。1997年4月に直腸がんのため、47歳の若さで亡くなった大津さんが病床で綴った詞に、見舞った浜氏が曲を付けた。

 大津さんは、つかこうへい劇団の劇中歌から作家活動をスタート。男闘呼組、西城秀樹、中村雅俊、高橋真梨子、矢沢永吉らに詞を提供してきたヒットメーカーで、さらなる活躍を嘱望されながら無念の絶筆。あるいは、妻で女優の根岸季衣と別れるつらさを遺作に投影したのだろうか。

 浜氏は、この盟友の曲をずっと温め、情熱的な母の熱唱とは対照的な娘の声質を「透明感があって、その上に薄い膜が張ってあるのが魅力」と見抜いていた。

 吹き込んだ彼女は、「私は曲の背景などを知らずに先入観なく歌いましたが、あとからじんわり良さを噛みしめています。この年ですから、好きだった人、忘れられない思いはもちろんあります。女性なら、あなたでなければ、という本物の恋愛経験が一度はあるでしょう」と瞳をうるませた。

 1996年、岡本真夜プロデュースによる「ANNIVERSARY」でデビュー。これまで、鈴木祥子、高橋洋子、障子久美といったシンガー・ソングライターたちが楽曲提供してきた。歌謡曲への路線変更に、ちゅうちょはなかったのか。

 「アルバムでは、母と『夢で逢いましょう』を歌ったこともあります。母の世代は、音楽に関しておしゃれで、豊か。片意地張ってないし、遊び心があってステキ。言葉尻は古いかもしれないけれど、普遍的に人間が持っている気持ちを切り取るという意味では昭和の歌謡曲ってサスガと思います。私の歌い方は母と違いますが、さらりと歌うから聞きやすい、と言っていただけるように、日本語の良さを残していきたいですね」

 これまではマイペースでライブ活動を続ける一方で、皮膚科医の父・石井禮次郎氏とのコラボで独自ブランドの化粧品開発やエステの企画・運営を手がけてきた。

 「最近は肌を気遣う男性が増えました。男性のほうが化粧品を浮気しない(笑)。生活習慣を見直すきっかけとしてコスメを使ってみるのもいいと思います。お湯とセッケンで洗って塩素でかぶれる方や、乾燥肌の方がけっこう多い。洗顔料で守ってあげることが大切です」

 テレビ、ラジオのオファーが相次ぎ、再び歌手活動へと本腰を入れ始めた。

 「コスメも歌も、気持ちいい、心地良いということが大事。素になれる心地良さが…」

 そう言いかけたところで、旧知の記者が、「うまくまとめるね」と腰を折ると、「えへへ。頑張らないと。うまくなったでしょう」と素を見せてくれた。

 (ペン・中本裕己 カメラ・原田史郎)

 ■石井聖子(いしい・せいこ) 1973年9月20日、東京都生まれ、37歳。95年に写真家、篠山紀信氏の「週刊朝日」女子大生オーディションに合格し、芸能界入り。上智大文学部卒業後、96年9月歌手デビュー。

 12日、ブルーノート東京で開かれる東日本大震災チャリティーコンサート「〜Journey back Home〜音楽と朗読でお連れする『こころの旅』」に歌手として参加する。チェリストの溝口肇、ピアニストの谷川賢作、詩人の谷川俊太郎、ラジオDJのレイチェル・チャンが出演する。

 

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