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【麿赤兒】米国公演で感じた父との不思議な“因縁”

2011.10.12


麿赤兒【拡大】

 9月19日、「第4回したまちコメディ映画祭in台東」で、世界に先がけ上映された「極道めし」(公開中)。その主役である囚人の1人を演じた。

 自ら「オールマイティーな役者」というだけに、演じる役柄も幅広い。

 「『極道めし』を監督した前田哲とは付き合いも長く、お互い関西出身で気心が知れている。刑務所で合部屋になる5人の俳優のチームワークも良く、囚人役のぎたろー(コンドルズ)を4人でからかったりしたんだ」

 刑務所とは無縁だが、若き日に新宿の留置場に“滞在”した経験がある。

 「酒を飲んで議論して喧嘩になり、朝目覚めたら留置場にいた。一緒に留置されたオカマさんに親切にされたりしてね」。そんな体験も、今回の囚人役に生かされているという。

 関西出身といえば、最近出演した映画「一枚のハガキ」の新藤兼人、「日輪の遺産」の佐々部清、「朱花の月」の河瀬直美の3監督全員が関西以西の出身だ。なかでも「朱花の月」は「子供のころ暮らした、よく知る風景の奈良での撮影だった」。

 最近はすっかり映画づいているが、ホームグラウンドは劇場、舞踏の世界だ。3月の震災直後に世田谷パブリックシアターで行った大駱駝艦の新作「灰の人」は好評で、11月24日からパリ日本文化会館で再演される。舞踏は海外でも「BUTOH(ブトー)」と呼ばれ、世界中に舞踏ファンがいる。

 大駱駝艦は昨年メキシコとブラジル、今年はスペインとフランスと、毎年のように海外公演を行っている。海外の舞踏集団に振付家として招聘される機会も多い。

 「初めての海外公演はアメリカで、39歳の時でしたね。軍人だった父は、私が1歳の時に当時39歳で太平洋戦争で戦死したので、何か因縁を感じました」

 次男で俳優の大森南朋は、今まさにその39歳。演技力は折り紙付き、ついでに艶聞も絶えない。「恋愛についてはね…。ちょっと、何やっているんだか…」と息子の恋の行方を心配する父親の顔をチラリ。

 映画「まほろ駅前多田便利軒」を監督した長男の大森立嗣(41)については「父親の私が海外公演する時は安ホテルなのに、映画祭に招待された息子は5つ星の最高級ホテルでした」と確実にキャリアを積む息子を羨ましがりながらも自慢げな表情だ。

 そういう自身も、2003年のハリウッド映画「キル・ビル」出演以降、行く先々で人の視線が変わった。

 「空港の入国審査で審査官が顔を覚えていてくれたし、ニューヨークのタクシードライバーも『キル・ビル』で見た俺の顔を知っていた。普段着が黒装束にブーツのせいもあるが、イタリアの公園にいたら若い女性が一緒に写真を撮ってくれとせがんできてね。もちろんOKしたよ」

 舞踏というと全身白塗りのイメージだが、「空港で、白粉を大量に入れた鞄を目の前に麻薬犬が妙な顔をして立ち止まり、係官に怪しまれたことも1回や2回ではありません。それも中南米などでね」と苦笑する。

 長年、舞踏で鍛え抜いた肉体は、68歳にして体脂肪率1ケタ。アスリートや若手タレントにも引けを取らない。8月に発売された「ハイパーアングルポーズSP怪人」(創美社)では、引き締まり熟成した肉体美を惜しみなく披露している。麿赤兒、その存在自体がアートなのだ。(ペン・小張アキコ カメラ・緑川真実)

 ■まろ・あかじ 舞踏家、振付家、俳優。1943年2月23日生まれ、68歳。奈良県出身。72年に舞踏集団「大駱駝艦」を旗揚げ。白塗りの独自のパフォーマンスは、海外でも高い評価を受ける。NHK大河ドラマ「篤姫」(2008年)、映画「キル・ビル」など、テレビ、映画に多数出演。現在、「極道めし」「日輪の遺産」「朱花の月」などが公開中。11月にはスペイン、フランス公演を行う。10月7日に初の自伝エッセー「怪男児 麿赤兒がゆく 憂き世戯れ候ふ」(朝日出版)が出版されたばかり。来年7月には創立40周年記念公演を東京・世田谷パブリックシアターで開催予定。

 

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