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【矢柴俊博】“名脇役”の出演料「有名俳優とは2ケタ違います」

2011.10.26


矢柴俊博【拡大】

 この顔、どこかで見たことがあるはず。映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」では木村拓哉演じる主人公・古代進の補佐役、「救命病棟24時」(フジテレビ系)では、江口洋介に対峙する耳鼻科医役、前クールのドラマ「チーム・バチスタ3 アリアドネの弾丸」では最初に殺される技師役…。自ら「脇役ファンタジスタ」と名乗るほど、数多くの作品に出演している。

 時にサラリーマン、時に笑顔のパパがハマリ役で、CMにも多く出演。「延べにすると47、8本。今年は目指せ50本と思っています。演劇をやっているときは、自分自身が投影したような悩める青年とか、欠けている人間を演じていましたが、CMでは『優しい、満ち足りたパパ』が多い。キャスティングに適応していった果てだと思いますね」

 いまでこそ売れっ子だが、実は苦労人。「CM出演は、ほとんどのオーディションを受けました。映画は監督の開くワークショップ、つまり監督を囲んでの講習会に参加して一本釣りされるのを狙う。会費が3万円から4万円もかかるから、絶対に元をとってやろうと、いかに(他の役者を)出し抜くかを考えます」

 著名な俳優やタレントの出演料は100万から1000万円単位だが、「僕は2ケタ違います」と苦笑い。それでも現在進行中のドラマや映画は4、5本はあるという。業界では、なくてはならない存在なのだ。

 ドラマ「北の国から」や「ふぞろいの林檎たち」を見て演技に興味を持った。監督になろうと日本大学芸術学部映画学科を受験したが、不合格。早大第一文学部仏文学専修に入学し、演劇サークルに入ったのが役者になるきっかけ。早大を7年半かけて卒業した後は、損保会社のコールセンターで夜勤をこなしながら、劇団「CAB DRIVER」を主宰した。

 質の高い作品は演劇フェスティバルでグランプリを受賞。「賞金で次の作品を回していましたが、2004年にジュンパ・ラヒリのピュリツァー賞受賞作『停電の夜に』を上演した際、演出にお金をかけすぎ、劇団の資金を使い果たしてしまいました」

 その後、演劇の観客だった脚本家の男性に「自分が脚本を書く深夜ドラマに出てほしい」といわれて、プロダクションに籍を置いた。「でも結局、ドラマは撮影も放送もされなかった」というが、活動の場は舞台から映像に移る。

 「自分の声も嫌いだし、顔も変わらない。どうやってその役に適応していくか…。本来の自分に合わない衣装を買って適応する、オーディションで差異化を図る−そういうふうにして生き残ってきたんですよ」

 特に存在感を見せつけたのが、テレビ版「電車男」(フジテレビ系)だ。全国各地のネットユーザーが、伊藤淳史演じるモテないオタク青年にネット掲示板を通じてアドバイスを送るストーリー。和服を着流した文学オタク、川端やすなり役で「〜ぞなもし」と必死で恋愛のアドバイスをする姿が視聴者に受けた。だが、実はセリフの多くはアドリブだったという。

 「面白いことをやれば、出番も増えるといわれた。だから、自前のハチマキを締めたり、『ぞなもし』のフレーズを言ってみたり。この出演もオーディションで決まったものですが、絶対うまくやろうと思いました。『電車男』(の出演)から、少しずつ仕事がつながっていきましたね」

 当初は「守衛さんA」など名前のないチョイ役が多かったが、今は脇役でも、ストーリー上欠かせない配役が回ってくる。

 「出番が少なくても意味のある、演じ甲斐のある役風が増えた。掘り下げれば意味の出てくる役風。楽しいよね」

 役作りのため、「霞が関の役人が仕事をする現場を見たり、役柄の仕事をしている人に質問や取材をする。こうして自分に負荷をかけると、いざ本番となるとグッとスイッチが入る。2時間ドラマのベタな役でも、カンヌでグランプリを取る気持ちでやりますよ」。

 次々とくる役を器用にこなすオールマイティーな才能は、尽きない役者魂から生み出される。(ペン・金正太郎 カメラ・宮川浩和)

 ■やしば・としひろ 1971年10月2日生まれ、40歳。埼玉県草加市出身。早大在学中から劇団「CAB DRIVER」を主宰。2000年4月、自身が演出・主演した「七部袖、ほくろ」がパルテノン多摩小劇場フェスティバルでグランプリなど主要3部門を受賞。04年3月、みずほ銀行CM「優遇される男」を皮切りに、ピザハット、ベネッセコーポレーション、日本マクドナルドなど大手企業のCMに多数起用される。映画は「亡国のイージス」「クライマーズ・ハイ」「ハッピーフライト」「岳−ガク−」など。テレビドラマも「NS’あおい」「のだめカンタービレ」「天地人」「傍聴マニア」「ブラッディ・マンデイ」など多数出演。2児の父。目標は「自分の劇団で憧れの木村多江さんを迎えて、公演すること」。

 

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