ぴいぷる

【坂田明】ミジンコは音楽につながる!命あるものが奏でる

2012.04.20


ジャズサックス奏者の坂田明さん【拡大】

 フリージャズの大御所を前に、のっけから失礼な質問を。かつてバラエティー番組を沸かした田中角栄元首相のモノマネ。絶品でしたね。

 「あれは大勝利ですよ。どこ行っても誰が居ても一番えらくなれます。『まぁ、このー』とやればね。あれは、何でできたんでしょうね。周りじゃ(イラストレーターの)南伸坊が長嶋(茂雄氏)やったり、(フォーク歌手の)三上寛が寺山修司をやったり、僕はわりとしわがれ声だから、ついハマって。実物よりもお前の方が面白いって。エヘヘ」

 昔からの遊び仲間、タモリや赤塚不二夫さんらの前衛的なお笑いと、自由奔放・変幻自在・痛快無比なサックスの音色が頭の中で符合した。

 で、なぜフリージャズを?

 「まず、ほかのジャズができなかった。サックスが下手だった。で、両方を生かしながらジャズマンのフリをできるのはフリージャズしかなかった。インチキっていやあインチキ(笑)。とりあえず死ぬ覚悟で吹けるところまで吹く。気力と体力ですよ」

 欧米でも大絶賛の天才は、虚実ないまぜのギャグでけむに巻いた。新作アルバム『ちかもらち 空を飛ぶ!』(キング)では1曲が16、17分という中にエネルギーが充満している。

 「自分の出した音に刺激され、引っ張られ先に行く。有酸素運動も1回15分以上やらないと効果ないでしょ。ある程度のところまで吹くと心臓破りの丘が必ず来る。そこで引き返したらバカヤロウ。そこを越すと気持ちよく走れる。あとはラストスパートをかけないと示しがつかない。わりとスポーツなんですよ。ハッハッハ」

 差し出された名刺2枚のうち1枚は、「東京薬科大学 生命科学部客員教授」の肩書。長年にわたるミジンコの研究普及活動が認められ、日本プランクトン学会から特別表彰されたこともある。

 ミジンコ愛ですか。

 「愛情は…ミジンコには通じないと僕は常々言ってますが、ありますね。音楽とミジンコが、どうつながるか。命です。ミジンコを見ていると命が透けて見える。そして、命あるものが音楽をやるということですよ。ツアーで田園地帯や池に出合うと、あそこにミジンコいるだろうな、と思うわけです。採集用具を車に積んでいる。打ち上げの部屋で、顕微鏡でミジンコを見ながらの焼酎がうまい。メンバーには迷惑なことだけど、ばかばかしくも楽しいんですよ」

 話が自在にズレて、深みにはまっていくのが心地良い。ジャズだ。

 「ミジンコは氷河にも相当高いところにもいます。酸素が少なくてもヘモグロビンの量を増やして生き延びる戦略がある。昨年、ミジンコのゲノム(遺伝子)が解明されましてね。3万1000かな。人間が2万3000。8000も多い。無限に近い適応能力があるわけだね。うん、そう、フリージャズもね。人間としてどう音を取り扱うかという無限の…」

 なんだかサゲに向かっていく落語みたい。

 「かつてはマジメに楽器を練習した。我々は練習しないと吹けなくなる。でも今はノイズだったら理科系の能力があれば機械で扱える。あとはセンス。フリージャズってのは、メインストリームではないんです。マイルス・デイヴィスではない。極左に近い。極右でもいい。脇を思いっきり走ってるバカヤロウがいて、ヨーロッパに持ってったらバカウケしちゃった。何をやってもいいんだ。別の言葉でいうとパンク。だれとでもできる。若い人からエネルギーをもらいながらやらないと。67歳のじいさんでもここまでやれるんだ、と何かしら感じてくれるんではなかろうか」

 最後に愚問。フリージャズの正しい聴き方とは?

 「聴き方を教えるわけにはいかない。秘密です。耳がそこに行けば聞ける。テレビがオーケストラを映していて、カメラがオーボエをとらえるとその音が聞こえるように、意識がそこに行けば、全部聞こえる」

 おそれいりました。(ペン・中本裕己、カメラ・大山実)

 ■さかた・あきら サックス、クラリネット奏者。1945年2月21日生まれ、67歳。広島県呉市出身。広島大学水畜産学部水産学科卒業。72年、「山下洋輔トリオ」に参加。メールス・ニュージャズ・フェスティバルを始め、ベルリン、モントルー、ニューポートなど世界中のフェスティバルに出演。さまざまなグループの結成、解体を繰り返し、最前線を走り続ける。

 最新アルバムでは、「坂田明&ちかもらち」のユニットとしてダーリン・グレイ(ベース)、クリス・コルサノ(ドラムス)のメンバーに加え、ゲストに山下洋輔(ピアノ)、ジム・オルーク(ギター)、八木美知依(箏)を迎え、天才プレーヤー同士がセッションでぶつかり合う。

 

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