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【古沢良太】新しいことやって視聴率とりたい!「リーガル・ハイ」大ヒット

2012.07.25


古沢良太【拡大】

 最新作は、6月までフジテレビ系で放送されていた連続ドラマ「リーガル・ハイ」。法廷モノは当たらないと言われ、それじゃあ法廷に頼らず、料理をたくさん用意するなど、主役の弁護士・古美門研介(堺雅人)邸を楽しく盛り上げてもらって主舞台にしようとしたが、いざスタートすると法廷シーンこそが面白いと評判になり、法廷モノとしては異例の大ヒットになった。

 自分では“コメディー書き”だと思っているので、「リーガル・ハイ」のような作品が最も得意なジャンル。もちろん、視聴率や観客動員数などの数字は念頭に置いて本を書くが、こうやれば有利という実績を踏まえた中で15%以上取っても、それには魅力を感じない。数字を取るのなら、そうじゃない新しいことをやって爆発的に取りたいと思う。

 その手法として、「出だし」と起承転結の「承」の部分が面白ければ何とかなると思って書き出す。NHKの連ドラ「外事警察」の1話の出だしは迫力満点の爆破シーン。よし、なぜ爆破したかは5話か6話で分からせよう…。ところが、書いているうちに何も思いつかなくなり、どこを書き直したのかも覚えていないほど書き直した。

 もっとも、“何とかなる”は余裕の証左。映画「ALWAYS三丁目の夕日」の時は、昭和30年代を懐かしむのではなく、人々が未来に向かって突き進んでいった強さやひたむきさを描きたいと思って書いた。これが共感を呼び、映画やドラマを通じて世の中をいい方向に変えることができるのではないかと思えるほどの自信になった。それが余裕につながっていった。

 第2次ベビーブームの団塊ジュニア世代。1970年代の日本やアメリカの映画、ドラマを見ると、「今でもいいなと思う」。そんな時代の香り、匂いが脚本の根底にある。

 中学生のころ、“表現する仕事”をやりたいと思った。藤子不二雄の「まんが道」を読んで、漫画家を目指して頑張っている姿に感動。こんな青春を送りたいと思った。絵を描くのが好きだったこともあって、漫画家になろうと決めた。手塚治虫が「漫画家になりたければ漫画を読んでいてもだめ。いい映画を観て勉強しなさい」と言っていたのを純粋に信じて一流の映画ばかり観つづけていたら、どういうわけか脚本家の道を選ぶことになってしまった。

 大学時代にシナリオの学校に通い、幻のチョウ「シロギフチョウ」を見つけるために共同生活する2人のダメ男らを描いた「幻蝶」を書いた。「台詞が面白く、無駄がない」と褒められたが、心の持ちようばかりを教える授業が嫌になってやめた。

 それから、独学。倉本聡や向田邦子のシナリオを読む一方、黒澤明の「七人の侍」の脚本を書き写し、テレビドラマを録画して脚本に起こすということもやったが、自作の脚本は書いていない。「大学を出てからはどうしようもない人間でした」

 27歳の時、テレビ朝日が21世紀新人シナリオ大賞の作品を募集していることを知り、「ちゃんと書いてみよう」と漫画家のアシスタントの物語「アシ!」を書き上げた。大賞に選ばれた。脚本家デビューするとすぐ、同局の連ドラ「動物のお医者さん」の脚本家グループにほうり込まれた。締め切りを設定されたうえ、何度も直しを要求された。「降ります」と言ってしまったこともあるが、「作品は参加している皆のものだから、あまり脚本家がエゴを言ってはいけない」ことを学んだ。

 ヒットシリーズ「相棒」にもシーズン4から参加。シーズン7の「蜜愛」では映画「約束」以来のファンである岸恵子へのラブレターのつもりで杉下右京(水谷豊)の先生役に“抜擢”した。「刑事ドラマに門外漢の僕が呼ばれたのは今までと違ったものを期待されているんで、やっちゃいけないことを結構やっています」

 テンポの良さも古沢流。やはりテレ朝の「ゴンゾウ 伝説の刑事」もそうだが、米ドラマ「LOST」のように複数の話を交差させロジカルに進めていき、台詞では前の人が言ったことを次の人に否定させることで予想外の緊張感、スピード感を出している。

 これから? 「リーガル・ハイのような得意なものを繰り出しながら、得意かどうか分からない原作モノなんかもできる範囲でやろうと思っています。人の作品って勉強になるんですね。いずれにしても、新しいもの、人がやっていないものをやっていきたいです」 (ペン・大倉明 カメラ・野村成次)

 ■こさわ・りょうた 1973年8月6日、神奈川県厚木市生まれ、38歳。東海大学文学部日本文学科卒。現在、月刊「日経エンタテインメント」にショートコミック「猫の手は借りない」を連載中。2005年の映画「ALWAYS三丁目の夕日」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、08年のテレビ朝日「ゴンゾウ」で向田邦子賞、テレビ東京「鈴木先生」で日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組部門最優秀賞など受賞。代表作は他に、映画「キサラギ」「探偵はBARにいる」「外事警察 その男に騙されるな」など。今後は「鈴木先生」「少年H」などの映画公開が予定されている。

 

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