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【山中千尋】小さな体に大きなパワー!女としては負け犬?

2012.07.27


山中千尋【拡大】

 ブルックリンを拠点に、世界中の舞台で演奏活動を展開。そのかたわら、文筆家としても活躍中だ。現在は音楽専門誌に2本の連載を抱えているが、地方紙やニューヨークのフリーペーパーに毎週、エッセーを発表していた時期もあった。

 「ピアノを弾いてこぼれたものを言葉ですくい取りたいし、言葉で表現できなかったことは音に託したいんです」

 幼少のころから『モノを書く人』に憧れていたが、おもちゃ代わりにしていたのはピアノである。本格的にレッスンを始めたのは小学校に入学してから。プロの道を目指していたわけではない。好きな音楽をもっと知りたいという好奇心が、ピアノを続ける原動力になった。

 その後、桐朋女子高校音楽科、桐朋学園大学音楽学部演奏学科(ピアノ専攻)を経て、ボストンにあるバークリー音楽大学に進んだのは、16歳で興味を持ったジャズを真剣に勉強したかったからだ。

 「いわゆるアドリブがまったく弾けず、どうしてもイチから学びたかったんです」

 レベルの高い同期の仲間たちに囲まれ、彼らに後押しされる形でさまざまなセッションに参加した。

 「当時まだ英語が話せなかった私は、声が掛かるとすべてOKとかYESと言っていたんですよ。そうしたら、『コイツ、できるぞ』という空気になってしまって。うふふ…」

 多くの有名ジャズ・ミュージシャンとも共演を果たし、賞も受賞した。大手レコード会社からCDデビューの話もきたが、それには断りの手紙を書いた。まだ、その域に達していないと判断したからだ。

 バークリーを首席で卒業した後、説得される形でインディーズ・レーベルからファースト・アルバムを発表。ただ、その時も称賛の声は自信につながらず、自分自身を満足させられなかった。『次はもっと良い作品にしたい』との思いで2枚目を制作。以降、すべてのアルバムがジャズ・チャートで1位を記録。あのカーネギーホールでも演奏するなど、人気ジャズ・ピアニストとしての快進撃が続いている。

 新作『ビコーズ』(ユニバーサル・ミュージック)は、自身のオリジナル曲を織り交ぜながら、ザ・ビートルズの楽曲を山中流に味付けしたナンバーが収録されていて、18日の発売早々、大評判となっている。

 「私なりにビートルズを咀嚼して大胆に変えた部分もありますし、メロディーの良さをピアノの響きだけで唄った曲もあります。ビートルズに対するこんな考え方もあったのかと感じてもらえたら、うれしいですね」

 稲垣潤一の最新アルバム『ある恋の物語 My Standard Collection』でも、ゲスト・ピアニストとして2曲、ソロ・パートを演奏している。そのコラボレーションは27、28日に神奈川・葉山マリーナの特設ステージで開催される『真夏の夜のJAZZ in HAYAMA』で楽しめるはずだ。

 「私は28日に出演します。稲垣さんのヴォーカルは本当に素晴らしいので、ぜひ多くの人にナマで体感していただきたいですね」

 8月前半はヨーロッパ・ツアー、後半はアメリカ西海岸、9月には全国ツアーも控えていて、休んでいる暇はない。身長150センチ、華奢で小柄な彼女のどこに、そのパワーが秘められているのか。

 「空港に着いた瞬間、スポーツ・ジムで汗を流して時差ボケを直すんです。ジムには高校のころから通っていて、当時、トレーナーさんからボディービルのコンテストに出場しないかと勧められたこともあるんですよ。そういえば私、“例のCM”に出演して、ピアノを弾きながら『ファイトー!一発!』と言うのも夢なんですよね」

 幸せを待っているタイプではないが、肉食系でもないそうだ。

 「女性としては負け犬だと思いますよ。ダメ男を好きになって、ひどい扱いをされたうえに振られたりするんですから」

 そう言ってチャーミングにコロコロと笑う。その表情をカメラが狙っているのを察すると、いきなり目の前にあった木に登り出した。

 「そこに木があれば登りたくなる。ピアノがあれば弾きたくなる。ジャズを聴いたら演奏したくなる。そんなノリです」

 状況をクレバーに分析しながらも直感を大切にし、体育会系の瞬発力で謙虚に走り続ける。山中千尋の生き方は、そのままそっくり演奏に表れている。(ペン・菅野聖、カメラ・高橋朋彦)

 ■やまなか・ちひろ ジャズ・ピアニスト、作曲家、アレンジャー、プロデューサー。福島県郡山市生まれ、群馬県桐生市育ち。バークリー音楽大学を首席で卒業後、2001年にアルバム・デビュー。05年、ヴァーブ移籍第1弾作品を発表し、09年にはヨーロッパでもCD発売。11年に、米デッカ・レーベルから日本人初のアーティストとしてアルバムを全米リリースし、大きな話題を呼ぶ。最新作を中心に披露する「全国ホールツアー2012」は9月7日からスタート。詳細はhttp://www.universal−music.co.jp/chihiro−yamanaka/。

 

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