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【秋吉久美子】あふれる好奇心!等身大の役を演じてみたい

2012.08.10


秋吉久美子【拡大】

 長いキャリアを持つ映画女優の最新主演作は『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』。北九州市を舞台に、少子高齢化や介護、認知症など現代の日本人が直面する問題を描く。精神科医の和田秀樹氏が監督を務めた。

 彼女の役どころは認知症を患う父の介護に直面する大学教授。いまだに小悪魔系のイメージが強く残る今までの役柄からすると、意外な気もするが…。

 「私が大学院の公共経営で学んだことを生かせる役でした。映画のテーマが温かく、それを社会に訴えたいという(監督の)思いも伝わってきますよね」

 2007年に早稲田大学政治経済学術院公共経営研究科に入学し、学生生活を送った。「機会に恵まれて大学院で学びました。いろいろなことができた時期でしたね」

 大学での経験は今回の映画にも十分生かされた。「メディア学科で教えているという役なので、モサッとした感じの学者というより、キャリアっぽい、ビジネスマン的なスタイルを心がけました。リベラルっぽい言動で、普段の格好もポロシャツなど。行動的なコンセプトで衣装を選びました」。スクリーンの中の姿は実に颯爽としている。

 認知症で壊れていく父親を演じたのは、名優・橋爪功だが、彼女自身の父親とも「顔が似ていますね」という。「私の父もハンサムな人でしたから」

 大学院は卒業したが、学ぶことには貪欲だ。「この春から、韓国語をグループレッスンで学び始めました。でも、進み方が早く、宿題が多くて…」と頭を抱えながらも楽しそうだ。

 読書好きとしても知られる。だが、「時間がなくて小説はあまり読みません。最近読んだ本は『舟木一夫の青春賛歌』(産経新聞社刊)。タイトルのイメージと内容は違います。題名からすると流行歌手を描いているように感じますが、内容は新聞記者が舟木一夫という1人の人間を追求したもの。思い込みではなく淡々と書いてあり、小説とは違った味わいがありました。私自身、歌手の方をこういう目で見ていなかったので、読んで感銘を受けました。不幸、苦難の中を真摯に生きてきた1人の人間の姿が見えます」

 高校時代まで過ごした福島県いわき市は、昨年3月11日の東日本大震災で甚大な被害に遭った。その苦しみは今も続いている。被災者支援の記事に彼女の名前を目にしたことは1度や2度ではない。

 「故郷だから頑張ったのでも、知り合いがいたからでもなく、大人として当然なすべきことです。(震災直後に)友人や同級生から『何とかしろ、あなたみたいな人が発信しろ』と言われて今日に至っています」

 10代でスクリーンデビューをして、時代時代にいろいろな役柄を演じてきた。「エキセントリックな役、ロマンチックな役は十分演じてきました。今は、現代の等身大の役を演じたいですね。たとえばソフィア・ローレンなら『ひまわり』ではなく、『特別な一日』で演じた子だくさんの母親のような、日常生活の中のドラマを演じたいです。もちろん、デヴィッド・リンチの(作品に出てくる)ような相当イカれた役も演じてみたいとも思いますよ」

 大学院での研究テーマは世界遺産。多くの日本人から忘れられた場所が海外から注目を集め、世界遺産に選ばれる。その内と外の認識のギャップに興味を覚えたのだという。観客の認識に大きなギャップを与えてきたこの人らしいテーマ。その好奇心を糧に女優としての挑戦はこれからも続く。(ペン・小張アキコ カメラ・高橋朋彦) 

 ■あきよし・くみこ 1954年、静岡県生まれ、58歳。高校まで福島県いわき市で過ごす。72年、「旅の重さ」で映画デビュー。74年の「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」の日活3部作で人気女優に。代表作は「異人たちとの夏」(88年)、「深い河」(95年)、「透光の樹」(2005年)など。09年に早大政治経済学術院公共経営研究科を修了。福岡で先行ロードショー中の『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』は今月11日から全国公開。9月には新歌舞伎座「浮浪雲」に出演する。

 

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