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【中村龍史】元気印の鬼才、難病と闘いながら笑い&活力発信!

2012.09.20


中村龍史【拡大】

 歌手のコンサートから大阪国体の開閉会式まで幅広い分野の構成・演出を手がけた後、マッスル(筋肉)ミュージカルの振りつけ・演出家として一躍有名になった。最近は、大人のためのエンターテインメントをテーマに、25歳以上の女性だけで結成したCHANCEのライブなどに力を入れている。「エンターテインメント作家」という呼称が最も似合う61歳だ。

 そんな元気印の鬼才だが、15年前に腎臓の機能を奪ってしまう難病を抱えていることが発覚。以来、人工透析と悪戦苦闘し続けている。その事実を初めて明かした自伝「満身ソウイ工夫」(光文社)をこのほど出版。身近な仕事仲間にも決して打ち明けなかったが、「満身創痍でも創意工夫で何とかなる。障害も悪いことばかりじゃない」ことを伝えたい気持ちが強くなったという。

 両親も姉も同じ病気で、いずれ自分にも遺伝することは分かっていたが、後ろ向きに考えたことはない。小学生のころから縦笛で歌謡曲を吹いたり絵を描くのが得意。中学1年の時、友人と一緒に東京・銀座の東劇で初めて見たアメリカのドタバタ喜劇映画「グレートレース」に感動、「こんなに笑った自分が信じられず、そんな仕事をする役者になろうと決めた」。

 小5の時に母親を亡くし、相談事は父親。劇団に入りたいと言ったら、「俺の知っているところならいい」。ギターの練習も始めた高校1年のころ、「劇団ひまわり」の募集広告を見つけて入団した。

 役者の仕事をこなしながらも、グループサウンズにあこがれて野球部のメンバーとバンドを結成。バイトで稼いだお金で日劇に通い、ウエスタンカーニバルやダンシングチームのショーなどを目の当たりにした。

 高校卒業直前にバイト先の知人から劇団四季の子供ミュージカルを見せてもらい、またまた感動。四季を受験して合格したが、「僕のように声のこもった役者は良い役がもらえず、四季時代は3、4作しか出てないんですよ」。

 21歳で退団。テレビドラマのほか、にっかつロマンポルノにも出演し、3本に主演した。そのギャラで初めてニューヨークに行き、ミュージカルを観て回った。

 演出家としてデビューするのは30歳になってからだ。歌手のコンサートの仕事から始め、松任谷由実の振り付けなどのステージングは11年間続けた。その後、篠原涼子らがいた東京パフォーマンスドールの立ち上げに関わり、吉本新喜劇の全国公演や小林幸子特別公演などの構成・演出も手がけた。

 そんな最中の1997年12月、腎臓が悪化。腹部にカテーテルを入れる手術を受け、腹膜透析をすることになった。「46歳。ここにチューブマンが誕生しました」

 ニューヨークに滞在中の2000年夏、血圧が230まで上がって倒れ、ER(救命救急室)に担ぎ込まれた。日本から脚本家の妻・留美子が駆けつけ看病。意識は回復したが視覚障害を起こしていたため、留美子が本を読んで聞かせた。心が安らぎ、幻覚も遠ざかっていった。

 朗読はなんと素晴らしいことか、と思っていた矢先に届いたのが朗読劇「天国の本屋」の演出の話だった。三途の川を見て以来、「ただ若い人とやんちゃするのではなく、丁寧に作るようになった」という。

 そして、「欧米型のミュージカルを壊し、日本発のオリジナルを創りたい」と、身体能力の高いアスリートたちを集めてマッスルミュージカルを立ち上げた。アスリートたちの一生懸命さと笑い、これに観客が参加するという斬新な形式が受け、2回のラスベガス公演を含め、6年間に30公演の構成・振りつけ・演出を手がけた。

 2008年にマッスルミュージカルの主要メンバーらと「中村JAPANドラマティックカンパニー」を設立。オリジナルミュージカルで“明日への活力”を発信中だ。そんな流れの中で昨年春にCHANCEも誕生した。

 「本格派のエンターテイナーを育て、日本のオリジナルを世界に売るのが夢なんです。言葉の違いでなかなか(海外に)出ていけないけれど、マッスルのようなものなら理解される。若い劇団員にエネルギーを吸い取られないように勝負しながらやっていきたいし、僕たちと同じ思いを持っておられる方々とチームを組んで作品を提供していきたいとも考えています」 (ペン・大倉明、カメラ・松本健吾)

 ■なかむら・りょうじ 1951年3月25日、東京・上野生まれ、61歳。劇団四季研究所(4期生)を経て役者に。81年、コンサートの構成・演出・振りつけを1人で手掛ける演出家としてデビュー。松任谷由実、中尾ミエ、森山良子、十朱幸代、小林幸子らの公演のほか、脚本家の妻・留美子とともにマッスルミュージカル、CHANCEなどを立ち上げ、ライブパフォーマンスを通して観客に活力と笑いを届けている。9月22日16時30分から、東京国際フォーラムホールCで行われる世界の障害者の音楽コンテスト「第9回ゴールドコンサート」の構成・演出も行う。

 

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