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【塩谷哲】いま最も旬なピアニスト「ジャンルを超えた表現が自分の音楽」

2013.07.25


塩谷哲【拡大】

 ジャズやラテン、クラシックからロックまでジャンルを超えて活躍するピアニスト。東京芸術大在学中にサルサバンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」に参加、国内外で高い評価を受けた。

 ソロデビュー20周年となる今年は、4年ぶりの新作「アロー・オブ・タイム」を4月に発表。5月に東京、大阪、名古屋で記念ツアーを実施した。ブルーノート東京で計6回行った公演は全回満席で、葉加瀬太郎、八神純子、KANら、そうそうたるミュージシャンが駆けつけた。ほかにも渡辺貞夫、平井堅、今井美樹、絢香、BENIら多くのアーティストと共演、いま最も旬なピアニストだ。

 「時間の矢」という意味を持つ新作は“リラックス・ウィズ・スリル”をコンセプトに、パーカッショニストの大儀見元ら気心の知れたバンドと、わずか1カ月で完成させた。「これまで経験を積んできた今の自分が感じるままを曲にしました」という。

 東日本大震災がモチーフとなった、天使がテーマの曲もある。

 「震災直後は『音楽なんて』という雰囲気もあった。でも次第に、お客さんが純粋に音楽を求める気持ちが伝わってきた。一生懸命に表現して提供して、深いところで感じあえるんです」。5月のツアーではこの思いを実践、「何か一つの生き物がいるような」会心のライブとなった。

 東京都内の普通の家庭に育った。両親が音楽好きで、原点は父が聴いていたオスカー・ピーターソンのジャズピアノと、2歳上の姉が通うバレエ教室で流れていたチャイコフスキーのオーケストラ。ピアノを習いながら都立高校に進学し、本格的に作曲を学びたいと東京芸大を志して、みごと現役合格を果たす。

 だが現代音楽の作曲に挫折し、セッションで知り合った大儀見に誘われてオルケスタ・デ・ラ・ルスへ。自費で敢行した米国ツアーが大評判となり、グラミー賞にノミネートされるなど世界的なバンドとなる。脱退後はソロのかたわら作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしても活動の場を広げた。

 ただ、さまざまなジャンルを器用にこなせることが逆にコンプレックスでもあった。

 「広く浅くで節操がない。すべて中途半端。これでいいのかと悩んでいた」

 転機は10年前、ジャズピアニスト・小曽根真との共演だった。そこで学んだのは相手の音をよく聴き、自分をオープンにして受け入れること。

 「僕を包み込みながら挑発し、聴く人の心の奥深いところを刺激する懐の深さに打たれた。憧れの人に認めてもらい、自信になりました」

 その自信が、三味線の上妻宏光との異色ユニット「AGA−SHIO」につながる。

 「彼の正統なじょんがら節に僕が自分の音を思い切りぶつける。衝突して新しい調和が始まる。すごく面白い化学反応で、ジャンルを超えた表現が自分の音楽だと気がつきました」

 アルバムを共作。国内外を断続的に公演しており、来年6月には欧州ツアーを予定している。

 ボーカリストたちからは「歌いやすいピアノ」との定評がある。20年近くサポートしてきたシングライク・トーキングの佐藤竹善とは、互いの名字の「塩と砂糖(佐藤)」から名付けた「Salt&Sugar」という名のユニットを組む。矢井田瞳とは「しおのやいだ」として6月に公演を3回行った。

 「竹善とは、妥協しないでやりたい音楽を追求するというミュージシャンシップでつながっている。ヤイコ(矢井田)も同じ。生き様を含めてカッコいいですね」

 13歳の長女と4歳の長男を持つ父親でもある。5月のブルーノート東京での公演は、うち2回を小・中学生も入場可とし、保護者同伴で料金を半額とした。子供たちからは『迫力あった』『よくわからないけどすごかった』などの反応が寄せられた。

 「料金を安くして家族で本物の音楽を聴いてもらいたかった。子供が何かを感じてくれれば十分だし、まっさらな反応は刺激にもなる。次の世代の将来に僕らは責任を負っています。サラリーマンと同じく、社会を構成する一人として、僕なりに力を尽くしたいんです」

 年内は20周年記念のイベントがめじろ押しだが、来年以降は「映画音楽もやってみたい」という。ジャンルを超え、音楽への探求心はとどまるところを知らない。 (ペン・藤沢志穂子 カメラ・荻窪佳)

 ■しおのや・さとる ピアニスト。1966年6月8日、東京都生まれ、47歳。東京芸術大学作曲科出身。在学中にサルサバンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」に参加。並行して93年からソロ活動を開始。ジャンルを超えたアーティストとの共演のほか、2005年の「愛・地球博」ではビッグバンドを率いたステージを演出。NHK「名曲アルバム」のオーケストラ・アレンジや、アジア、欧州、アフリカでの海外公演など活動は多岐に渡る。

 ソロデビュー20周年の今年は、9月28日に東京・Bunkamuraオーチャードホールで上妻宏光、佐藤竹善を招いて公演。11月30日には小曽根真をゲストに東京・紀尾井ホールで公演する。国立音大非常勤講師もつとめている。

 

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