ぴいぷる

【薬師丸ひろ子】「野性の証明」で高倉健に釘を刺されたことがベースに

2013.07.26


薬師丸ひろ子【拡大】

 大女優・鈴鹿ひろ美は、いつも1人で行動している。1人で寿司屋に行き、1人で杯を傾け、1人でタクシーに乗って帰る。最近ようやく、「あまちゃん」という付き人ができたが、四六時中、一緒にいるわけではない。大女優なのに、取り巻きの業界人もいない。孤高でミステリアス。ゆえに大女優と呼ばれる。

 現実の女優も、1人で動く。取材場所には1人で車を運転してきた。そしていまだに、華やかな芸能界に「なじめない…というか、なじまないんですね」とつぶやく。

 「年を重ねるごとに、人見知りが強くて幼稚園にもろくに行けなかった本来の自分の姿が見えてきました。鈴鹿ひろ美さんもそうですね。普段着は黒い服ばかりで、役の設定によって華やかな衣装をまとう。そうやってモチベーションを上げていく。どこか自分と似ていると思います」

 自分本来の姿。それは「都会の田舎育ち」だという。

 「育った場所は東京のど真ん中で、通学路ではみんながおしゃれをして高級車に乗っていて、いわゆるスターの人たちも日常的に見ていました。そんな中を自分は体操着に半ズボンで、水筒を斜めにかけて通学していましたからね。都会にいながら都会とのギャップをいつも感じていました」

 映画「野性の証明」で鮮烈なデビューを飾った後も、ギャップは埋まらなかった。むしろ埋めなかった。それは自身の意思であると同時に、“師”の教えでもある。

 「13歳の時、(「野性の証明」で共演した)高倉健さんに『チャラチャラするなよ』と釘を刺されたことが、今日に至るまで自分のベースになっています。その釘が今も(心に)刺さっていますね。しかも、その後の健さんはどんな時も『偉いね』『頑張ってるね』としかおっしゃらない。そう言われたら頑張るしかないですよね。私にとって一番厳しい、怖い言葉であり、本当にありがたい言葉だと思います」

 都立高校時代の恩師からは「学校を休むな、とにかく出てこい」と言われ続けた。仕事で休むのが当たり前とクラスメートに思われたら、「学校生活の実感を得られない」というのが彼の持論だった。

 「その先生のおかげで、特殊な仕事をしながらも普通に学校生活を送れて、いい友達にも恵まれました」

 大学進学後も2人の教えに従い、映画以外の露出を絞った。それが“孤高の女優”像を作り上げることになったが、仕事と自分のギャップに苦しんだ時もあるという。

 「どの監督にもほめられないまま青春時代を過ごし、そんな自分がなぜこの仕事を続けているんだろう、なぜ応援してくれる方がいるんだろう、と思い悩みました。それで30代の半ばごろ、ニューヨークでカウンセリングを受けたんです。ところが先生に『20年弱、女優をしている』と話した途端、カウンセリングは終了。『本当に仕事が無理なら、そんな年月はやっていられない。仕事が好きで、魅力を感じているのだから、続けられる限りやりなさい』と言われました」

 「必要とされなければ、この仕事はできない。こんな自分を使ってくれたり、見てくれる人がいる、そして自分自身に仕事をやりたいという意思があるのなら、もう後ろは振り返らない−そんなふうに思えてきました。500ドルも料金がかかったんですが(笑)、それ以上の価値がありましたね」

 前を向く。観客と仕事仲間、そして自分のために−。この秋、2年ぶりに開くコンサートでも、「自分の役割」をまっとうするつもりだ。

 「仕事の打ち上げとかイベントで歌うことがあるんですが、聴いた皆さんが『昔、付き合っていた人を思い出した』とか『この曲が映像の仕事をするきっかけになった』と口々におっしゃるんです。歌は人の心に届き、思い出に残るんですね。ですから、変にアレンジはせず、原曲のキーとイメージのまま歌をお届けします」

 「こんな自分」「私のような者が…」。35年のキャリアを重ねながら、そんな言葉を何度も口にした。孤高でミステリアス。けれど、たぶん「大女優」と呼ばれることはない。それでいい、とファンは思っているし、彼女自身もそう思っている。 (ペン・斉藤蓮/佐々木浩二 カメラ・寺河内美奈)

 ■やくしまる・ひろこ 1964年6月9日、東京都港区北青山生まれ、49歳。玉川大学卒。中学1年の時、角川映画「野性の証明」のヒロインオーディションに合格。78年、同映画でデビュー。81年、主演映画「セーラー服と機関銃」の同名主題歌で歌手デビュー。学生時代は学業優先で、映画出演は年に2本のペースだった。2000年代に入り、ドラマ「木更津キャッツアイ」、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどで新境地を開拓。歌手としても11年の主演映画「わさお」で22年ぶりに主題歌「僕の宝物」を歌い、歌手活動30周年記念ベスト盤「歌物語」を発売した。

 芸能生活35周年記念単独コンサートの東京公演は10月1、11日、Bunkamuraオーチャードホール(問い合わせ:キョードー東京チケットセンター(電)0570・550・799)、大阪公演は同5、6日、森ノ宮ピロティホール(問い合わせ:キョードーインフォメーション(電)06・7732・8888)。入場料はすべて8940円。チケット発売は7月27日から。

 

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